「あ、あのヴァルアさん。 1つお聞きしてよろしいですか……?」
「……? 何よ?」
 黒覆面の彼女が返す。
「いや、何つーか――何でよ?!」
 同じく黒覆面の彼は、素朴な疑問を口に出した。 「それじゃ、出発しましょうか」
 朝起きて、下の食堂で朝食をとった後、僕らは出発することにした。
 行き先は「アルスラの森」。ハスラからグルテマの間にある大きな森の名称だ。……グルテマからハスラに来たのに、また同じ道を行くのは少しお金がもったいない気もしたけれど、とても歩いていける距離ではなかったので僕らは荷物を持って乗合馬車の停留所へと向かった。
 この前昼飯を食べたサマラ軒の前の停留所。僕らと同じように荷物を持った人たちが並んでいた。ざっと……10人程だろうか?でもまだ出発時間には余裕があるのでこれから増えるのかもしれない。
 何といってもこの停留所から出る馬車の行き先は首都グルテマ。行く人だって多いはずだ。
「……何かこっちに来たときよか人多くなりそーだな」
 同じように思ったのか、横でファルが呟いた。……そういえば、こいつの座る場所も考えておかなきゃな。とりあえず窓際か。
「ファル、今回も窓際に座れよ。 なるべく奥の方がいいと思うし……ちゃんと取れよ?」
 と、3人の中では1番前にファルを押し出す。
「ん、まかしとけって。 押しのけてイイ席取ったらぁ」
「いや、押しのけんでいーから」
 ゴゴゴゴゴ、と無闇に燃えるファルにすかさずツッコミを入れる。そうでないと周りの人の視線が痛すぎるのだ。しかも1番近い“周りの人”になっているヴァルアの視線は死ぬほど痛ひ。
「……あと5,6分、てとこかしらね」
 停留所の上にある時計を見ながら呟いた。出発時刻は9時、今は8時55分なので確かにそのくらいだ。
「そうだね。 ……でさ、僕らはどうするの?」
「……どうするって、何を?」
 至極最もな疑問を口にしたつもりなのだが……どうやら彼女には意味が通じなかったらしい。
「どうする、ていうか……その……アルスラさんに会うんでしょ?」
「えぇ」
「でもさ、森は途中じゃない? ってことは途中下車……?」
 昨日の夜に朝食の時に説明すると言われていたが、結局この馬車に乗る、としか言われてなかったのだ。
「あぁ、そういう事。 うん、そうなるわね。1回休憩が入るはずだから、そのときにトンズラすればいいでしょ」
 トンズラて……、別にやましい事をするわけじゃないのに何でそういう表現を使うかな。僕は初めて会ったときからの印象が少しずつ変ってきているのを感じながら密かに思った。
 そう、別に途中で降りたからといって怒られるわけじゃない。乗合馬車は乗るときにお金を払うのだから……途中で降りたら自分が損ってなだけだ。
「トンズラか〜、うんイイ響きだねぇ……」
 ごりっ
 僕が横で難しい顔して唸ってるというのに、この馬鹿は。何となく最近思考より体が先に動くような気がするなぁ、なんて思いながら僕の手はファルの頭を殴っていた。
「……まぁ、イイ響きかどうかは置いといて。 兎に角休憩に入った後、戻らなければいい話だから」
 別にどうする、ってこともないでしょ?、とヴァルアは言った。
「ん、ま、そうだね。 ――あ、あれかな?」
 軽く頷いた後、道の向こうに土煙が上がったのを見て、僕は指差した。
「あぁ、そうみたいね」
「おー、何か馬めっちゃはりきってんなー」
 確かにやたらと土煙が激しい……何かあったのかな?そう思ったのもつかの間、今度は土煙と共にあった音が聞こえなくなってしまった。つまり、馬の走る音と馬車の揺れる音。
「……どうしたのかしら」
 ざわざわと人の集まった停留所は騒がしくなっていく。するとファルが似合わない深刻そうな顔つきで「ちょっと行ってくる」と言って、走っていってしまった。
「な、おぃ! ちょっと待てって……!」
 一瞬呆けたが、すぐに追いかける。くそっ、アイツ足速いし……!!

 ファルが豆粒くらいに小さく見えるくらいの間を空けたまま、僕は後を追っていた。馬車が止まっていた所までは結構距離があるようで……長距離は余り得意でない僕は少し息があがっていた。
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 一旦立ち止まって息を整える。その間にもファルとの距離は長くなり……どうやら着いたようだ。

「……!? …………は……、なのか……?」
「……。 ……だ、……しれん……」


 途切れ途切れに聞こえてくる声。動作から考えると割と大きな声でしゃべっているようなのだが、ここからじゃ全然わからない。僕は何とか息を整えなおして、また走り出した。
「――彼、何かやってるわね」
「っ?! ヴァルア! ……え、荷物は……?!」
 走り出すと同時に後ろからヴァルアがやってきた。僕が休んでいる間に追いついたらしい。
「荷物? あぁ、近くの人に頼んでおいたわ。 大丈夫よ、盗まれたりしないから」
 何故か自信満々に言い放つ彼女に少しの疑問を覚えながら、僕は前を向いた。視界は走るごとに揺れる。でも確実にはっきりしてくる景色を見て……首をかしげた。
「何か光ってる……?」
 そう、もう土煙もほとんど消え、馬車はもう見えるようになっていたのだが……何やら光っているようなのだ。
「ファルのヤツ、何やってんだ?」
「……」
 別に独り言のようなものだったから返答は気にしないけれど、ヴァルアは返してこなかった。何処か驚いたような表情でただ前を見据えているだけ……。
 僕らがその場所につく少し前に光は消え、汗を拭うファルと御者のおじさんが見えてきた。

「っふー、助かったよ兄ちゃん。 おりゃマジで死ぬかと思ったぜ」
 ファルの手を握り締めてぶんぶんと降るおじさん……結構いい年だと思うのだが、腹は出てないし、なかなかダンディーな人だった。……ってそんな事はどうでもよくて!
「ファル!!」
「あ、ビスター。 ヴァルアも……どったの?息きらして」
 握り締められていた手を丁重に離すと、ファルはこちらへ駆け寄ってきた。
「どったの?じゃねーだろ! 一体何があったんだよ?」
「は? ……いや、別に何も……」
 ファルは困惑したような表情で頬をかいている。そして絶対に何かあったのに、口を濁す。
 らしくない、そう思った。
「何もないわけないでしょ。 よくわからないけど、光ってたわ……それにこの土煙のワケは?
 何があったの?」
 有無を言わせぬ態度でヴァルアが詰め寄る。ファルは両手を前に出して一生懸命宥めようとしようとしているが、そんなの聞くはずがない。
 するとさっきまでファルの手を握り締めて礼を言っていたおじさんが間に入った。
「ま、まぁ、姉ちゃん落ち着けって。 この兄ちゃんはオレの命を救ってくれたんだよ」
「「はぁっ?」」
 思わずハモってしまう。……にしても、命?
「いや、恥ずかしい話だが……そこの停留所に行こうと馬車で来たんだがな、この街に入るちょっと手前でいきなり馬が暴れだしてよ。そのままここまで来ちまったわけだ。
 そしたらここに来た途端、突然止まりやがって……しがみ付いてるのに必死だったオレはいきなり止まったせいで放り出されてさ。何とか立ち上がってみると、馬がピクリとも動かねぇ。オレは頭を怪我してた……でヤバかった所に兄ちゃんが来たわけだ!」
「ヒヒーンッ」
 馬が相槌を打つように鳴いた。
「――よく意味がわからないわね。 あなたが怪我をしてる? 馬が動かない……?」
 おじさんの説明にヴァルアは腕を組む。僕だって意味がわからない。実際、馬は元気だし、おじさんは至って健康!な感じだった。
「……まぁまぁ、話は最後まで聞くもんだぜ。
 で、さ。兄ちゃんが来て……オレと馬を見て話しかけてきてよ。んでくらくらする頭で事情を話してたらよ、突然痛みは愚か、怪我してたのも忘れるくれぇに快調になったんだ!」
 コイツもオレと同じようにこの通り!、そう言っておじさんは馬の頭を撫でた。
 僕は未だよくわかっていないのだが、馬車の時間が過ぎるという事でとりあえずおじさんに言った。
「えぇと、時間が……もう過ぎてますけど?」
「なにっ?! そりゃイカン! この便は利用する客がたくさんいるんだ!」
 おじさんはさっと御者台に上ると、僕らにも乗るように言ってきた。一瞬戸惑ったが、また走って戻るのはアホらしい上に間に合わないので、乗らせて貰う事にした。



* * *



 時間に少し遅れたものの、御者のおじさんが割りと有名でとても良い人だったからか、問題などは起きずにすぐに出発することが出来た。そして僕らは荷物を無事に受け取り、1番後ろの席を確保していた。
 無事に目当ての席もとれたし、さぁ、今から出発だぁ!と気分が良くなるはず……なのに、異様に周りは暗かった。いつも茶化したりしてくるファルは黙りこくっているし、ヴァルアはそんなファルを凝視しているし。真ん中に座っている僕は何だかとても気まずい位置に居るようだ。
「きゅ、休憩場所まではどのくらいかかるんだろうなぁ!」
 自分でも声が裏返ってるのがわかった。……くっ、情けない!
「さぁ? 行きと同じなら20分くらいじゃねーの」
「そうでしょうね」
 ……めっちゃ、気まずい。
 別に構って欲しいとかそういうんじゃなけど、無性に悲しい。……と言うより、“虚しい”。
「……20分くらい……はは、そうだよな……」
 余りに率直過ぎる2人の答えに、僕は笑った。――なんか馬鹿みたいだ。



 そんなギスギスした雰囲気のまま、馬車は揺れる。
 ガッタン ゴットン、と規則正しい中に時折イレギュラーな振動も混じって、着実に道を進んでいった。



「休憩だぞー! おりゃー、皆新鮮な空気吸って気分入れ替えろや〜」
 御者台から声がかかると、それぞれに外へ降りていく。中には残る人も居るようだが、ほとんどの人が降りていた。止まった場所はグルテマから来たときとは違う場所のようだった。
「じゃ、僕らも降りよっか」
 そんなに大きくない荷物を持って両脇の2人を促す。未だぎすぎすした雰囲気の人達に挟まれてるのは精神的にすごいキツいものがあったから、早く外に出て新鮮な空気を吸いたかった。

 外に出ると馬車・歩行用に作られた街道以外は全くの未開地のようだった。……と言ってもそれは僕達人間だけの話、歴史の教科書や伝説によるとこの森の人間が踏み込めないような場所にはたくさんの種族が暮らしているらしい。そして“魔法使いアルスラ”もその中の1人――本当に会えるのだろうか?
「さて、と……ここら辺に隠したはずなんだけど……」
 僕らよりもっと小さい荷物のヴァルアはその荷物を肩にかけ、少し茂みに入った所で何かを探していた。
「――よし、あった」
 カチッ
         ブオォォン
 ボタンを押すような音が聞こえたかと思うと、突然茂みが割れて道が現れた。
「な、……何だこれ?」
 思わず訊いてしまう。するとヴァルアが答える前にファルが答えた。
「魔法だろーな。 外部からの進入を防ぐためにこうやって隠してんだよ」
「……ホントか?」
 嘘をつく必要なんてないけれど、何となくそう言ってやりたくなった。
「ンだよ、疑ってんの? ヤーだなぁ、ビスターってば。 俺、利益のねぇ嘘はつかねーよ?」
「いや、利益なくても嘘つくなよ」
 はっはっは、とやたら胸はって答えるファルにズビッと突っ込む。
 その間にもヴァルアは先へ進んでいたらしい。奥のほうで手招きをしている。
「この道を行けば私の家があるわ。 1本道だから迷うはずがないし、ビスター先行っててくれる?」
 手招きしている場所まで来たらそう言われた。僕は別段断る必要もないので頷いた。
「あ、でも家に着いてもベルを鳴らしたりしないでね。 死ぬから」
「うん、わかった。 ――って死ぬからっ???!」
 余りにサラリと言われたから普通に流したけど……死ぬ??? 頭の中を疑問符が駆け巡る。けれどその疑問符の正体を聞き返す前にヴァルアは移動してしまっていた。
 ――ヴァルアはファルに何かを問いかけているようだった。
 何となく盗み聞きをしたい気分にかられたけれど、そこまで腐ってないのでやめておいた。それに一刻も早くギスギスした空気の原因を解消して欲しかったし。

 しばらく進むと、どんどん道が綺麗になっていくのに気づいた。最初は獣道のようなただ木や草がないだけだったけれど、今歩いている場所はきちんと補整された道だ。目的地が近づいているという事だろうか?
 2人はまだ来ない。時々後ろを振り返って確認するけれど何も見えては来なかった。……そんなに話が長引いているのか? う、ううむ、盗み聞きしときゃ良かったかな……、なんて今更後悔の念が押し寄せてきたり。
 でも今更戻るわけにもいかないので、僕はどんどん綺麗に補整されていく足元を見ながら進んでいた。……かれこれ10分ほど歩いただろうか? 突然誰かにぶつかってしまった。
 ドンッ
「あ、すみませ――……は?」
 目の前には居るはずのない人物。
「遅かったな、ビスター。 ん〜、もう年寄りか?」
 めきょ
 とりあえず殴ってみる。 ……手にはちゃんとした感触。
 がすっ
 ついでに蹴ってみる。 ……足にもちゃんとした感触。
 あれおかしいな、やけにリアルな感触ばっか。ふむ、と顎に手を当てて悩んでみたり。すると少し離れた場所からまた信じがたい声が聞こえて来た。
「ビスター来たのね。 じゃ、2人ともこっち」
「……!!! な、何で2人が此処にいるんだよっ?」
 僕は眼がおかしくなったのかと思って、目を擦りながら尋ねた。そしたら殴られて蹴られて少し凹んでいた(彼にしては珍しい)ファルがここぞとばかりに仕返しをしてきやがった。正確には“しようとした”だけど。
「んっふっふっふ、それは俺様とヴァルアちゃんだけのヒ ・ ミ――」
「近道を来たの」
 口元に手を当てて、恐らく「ヒ・ミ・ツ v」だの何だのぬかそうとしやがったファルの言葉を無視し、ヴァルアが教えてくれる。なるほど、近道があ……な、なにいぃ?!
「な、な、なんでそれなら僕に言ってくれなかったんだよ?! 結構歩くの大変だったんだよ?!」
「仕方がなかったのよ、ごめんなさい」
「う……いや、そんな謝って欲しいわけじゃないけど……」
 これがファルだったらど突き倒した挙句不透明の黒いゴミ袋に入れて放置するのだが……相手はヴァルアだ。とても出来るはずがない。 僕は何だか1人蚊帳の外に出された気分がして少し虚しかった。
「ちょっと事情があったの。 今度来るときはたぶん“近道”で来れると思うわ」
 木に向かって愚痴っていた僕の側まで来てヴァルアが再度謝る。……事情って何なんだろ?そう思ってファルを見てみても、わざとらし過ぎるほどに口笛なんか吹いてるし。
 僕は気づかれないようにため息をついた後、作り笑いを浮かべた。
「うん、そんなには気にしてないから。 それよりさっきから何やってんの?」
「え? あぁ、これね……侵入するためにちょっと必要なのよ」
 そう言って彼女は黒い何かを持ち上げた。



* * *



「この家に入るには、ちょっと命かけないといけないのよ」
 僕らに黒い何かを渡しながら、ヴァルアは言った。……はて、命ですとな?
「あ、あの……家に入るのに命かけるってどういう事で……?」
「トラップが仕掛けられてんだと」
「へぇ、そう、トラップが……。 ……。 ……何でンなもんがあんねん」
 ヴァルアの代わりにファルが答えた、とかそういう事は既にどうでも良かった。たぶん近道を行くときに話してたんだと思っていたし、別に知る必要もないと思っていたから。
 それよりもトラップ……って!!!?
「お祖母ちゃんの私への修行の一環なのよ。 だから帰ってくるのはいつも命がけ……ホント疲れるわよ」
 そう言いながらも表情が輝いているのは気のせいではないだろう。
「修行の一環……そ、そぉなんですか」
「全く迷惑な話だよなー……、でもビスターはアルスラに会いたいだろ?」
 ポケットに手を突っ込んで悪態をつくファルだけど、最後に僕の方を見て付け足した言葉は嬉しかった。
 ……うん、会いたい。というか、コイツに関して訊きたいことがあるから行くようなモンなんだけど。
 けれどその理由を此処で言うわけにはいかないので、ただ頷きだけ返した。
「それなら行くしかねーよなっ」
 うっしゃぁ、頑張ろか!、と気合を入れたファルはヴァルアから渡された黒い何かを広げた。
 ……。
 えぇっ?!
「あああ、ああのヴァルアさん。 僕ら今から何をしに行くんですかね?」
「え? 別に……私は帰る、2人は遊びに来る……でしょ?」
「それじゃぁ、何で“強盗さんの必需品☆”の黒覆面渡すんですかい!!」
 そう、ヴァルアが僕らに渡したのは、眼と口の部分に穴が開けられた……所謂黒覆面だったのだ。

「あ、あのヴァルアさん。 1つお聞きしてよろしいですか……?」
「……? 何よ?」
 黒覆面の彼女が返す。
「いや、何つーか――何でよ?!」
 同じく黒覆面の彼は、素朴な疑問を口に出した。僕もまた黒覆面の彼――ファルに深く同意した。
 黒覆面を着けることには渋々了解したけれど、ここまであからさまに怪しくなるとは思ってもみなかった。
「でもこうしないと有毒ガスとか発生してる場所もあるし……」
 ガスマスクを装着しているせいか、声が若干聞き取りにくいが彼女はそう言った。
「だから何で家ン中に有毒ガスなんだよ?!」
 ファルがすかさずツッコミを入れる。僕だってそうしようかと思ったけれど、もうヤル気が起きなかった。
「……ファル、ここまで来たんだ。 あきらめよう」
「いや、思いっきり後ずさりしてるビスターに言われても全然説得力ないんだけど」
 カックン カックン
 そっ、そんな事言われたって体が勝手に……!この年で命落としたくないんだよーっ。 声には出さないけれど、表情でそれを出す。自分ながら情けないと思うけど、だって、虚しすぎる!
 ――ライラ家の跡取り、家出の末悲しい帰還――
 なんて三面記事どころかトップを飾りかねない。もちろん写真は僕の棺が運び出されてて、両親が横で写真持ちながら泣いてる場面だ……あぁあぁ、考えるだけで悲しい!!!ま、家出じゃないんだけどさ。
「……まぁ、別に無理しなくてもいーけど……ヴァルアちゃん、ビスターの事意気地なしって思うだろな〜」
 ぴくっ
「俺もこんなヤツに召喚されただなんて、末代までの恥になっちゃうな〜」
 ぴくくっ
「あ、ヴァルアちゃ〜ん。 ビスター、何か無理とか言っ――……!!!?」

 ガスッッッ

「ははは〜、ヴァルア今行くね〜」
 軽やかな足取りで彼女の後を追う。手に持っている大きめの石はちゃんと草むらに投げ捨てておいた。



 そして僕らは、アルスラの家へ侵にゅ……いや、“お邪魔させて貰う”ことになった。