「ぶえっくしょいっっっ!! うー……」
ったく寒すぎるんだよ、暖房の効きは悪いしカイロは持ってくるの忘れたし。カイロは……まぁ、自分が悪いような気がしない事もなかったけれど。……わ、悪くない!!うんっ!
僕は隙間風の寒い窓際で外を見ながらコーヒーをすすっていた。担当していた事件も片付き丁度暇が出来たのだった。そんなに難しくない、ただの盗難 ―― “ただ”などと言ったら被害者の人に怒られそうだけど ―― だったから。
でも、本当にすぐに犯人が捕まってよかった。このクソ寒い中の聞き込みは死ぬほど辛いものがあったからなぁ……。
僕はふと、昔の事を思い出した。
そう今くらいの時期、はじめてちゃんとした事件を任されたときのこと……。
まだ肌寒い二月のことだった……あの時僕は警視からとある事件を任されていた。資料を見る限りでは、それ程難しくない事件と思われた。
しかしこの事件。一筋縄ではいかない大変な事件だったのだ。 |