「ええぇぇぇ!??! フレアってあの人と同じ名前じゃない!!!?!」
 まだ暑い夏の日差しの中、クーラーをガンガンにかけた教室で少女が叫んだ。



 少女の名前はナナ=カルラ。先日このR学園に転校してきた14歳の女の子である。……「少女」と言っていて男の子だったら吃驚だが、ちゃんと女の子である。
 転校初日はかなり緊張していたもののすぐにクラスにも打ち解けた。担任の守山滋氏によると『……あの子も変だったんだな』だそうだ。そんなクラスの担任をしているのもだいぶ変だと思うが……ま、それは言わないで置くとしよう。
 そんな少女だったが転校して来てからまだ日が浅く、クラス全員の名前を覚えれていなかった。それを知ってか知らずか先生が学級会を開いた。もちろん目的は「自己紹介」。……ていうか普通初日にやらないか?

 学級会が開かれたのは5時間目。昼食も終わり皆うつらうつらとしてくるこの時間だが今回だけは皆目をギンギンにしていた。……クーラーが利きすぎだった。まぁ、それだけではなくやはり自己紹介というのは少なからず緊張するもので皆何を言おうか考えている為でもあった。
 そして、紙が配られた。


// 自己紹介カード //

1. 名前(大きな声ではっきりと言おう!)
2. 誕生日(皆に覚えてもらってプレゼントをせしめよう!)
3. 得意な事
4. 大切な物
5. 自分のセールスポイント
6. 一言



 いや……あの……ガキじゃあるまいし……、それに“せしめる”ってどうやねん。
 今ここに出ているのはちゃんとパソコンで作ったものだったがはじめは守山先生の手書きだった。余りにも字が汚いため碧先生がこっそり差し替えたらしい。
 プリントが皆に行き渡った後守山先生が書くように言った。
 ただシャーペンを走らせる音だけが聞こえる ―― などとなるはずがなく皆口々に『どうする〜?』と話し合っている。少女は周りを少し見渡した後書きはじめた。
(えーっと、名前はナナ=カルラ……っと。誕生日は8月12日。 得意な事……何かあるかなぁ……あ、料理!大切な物は今は一緒にいないけどペットの猫でセールスポイントは人見知りしない!
 一言……ま、よろしくお願いしますでいいかな?)

「よーし皆書けたな?それじゃどっちからはじめるか決めよう。 窓際の一番後ろと廊下側の一番前の人は立って」
 ガタガタッ
 二人が立ち上がった。一人は男の子……羽の生えた小さい子。名前はココロと言う。大きさは小さいが年齢は少女と同じぐらいだった。もう一人は女の子。結構美少女なのにいかんせん服装が悪い。皆このくそ暑い中涼しげな色の服を着ているというのにこの人物は真っ黒。皆に喧嘩を売ってるとしか思えない。……まぁ長袖でないだけマシかもしれないが。
 ちなみに名前は守山美沙という。クラスの人は皆「美沙君」と呼んでいるので此処でもそう呼ぶこととしよう。
「それじゃじゃんけんして」
 ココロと美沙君は手を出して振った。結果……ココロがグー。美沙君がパーを出したため美沙君の勝ちとなった。普通ならば負けた方からの発表となる……そう普通ならば。
「ココロの負けだな。よしそれじゃ美沙の方から発表だ」
「はっはっはっは!!父さんアホじゃないのかね?!私が勝ったじゃないかっ!」

 当然ブーイングの声が上がる。……皆さんもうご存知の事だと思うが美沙君と担任の守山先生は親子である。もちろん副担任の碧先生もである。父親には似ても似つかない容姿の美沙君だが碧さんにとても似ているというわけでもない。……隠し子?そんな事はないが兎に角父親似ではない。
 ま、それはさておきブーイングの声が上がった。がその時ドアが開いた。
 ガラガラガラ
「こんにちはー。 病院行ってて遅れました」
 青年が入ってきた。そう今入ってきた青年、転校前に少女がぶつかった人物だった。少女はその事を転校初日にわかっていたようだがまだ話したことはないらしい。
 ちなみにこの青年名前は山下尚吾という。いつも眉間に皺を寄せて腕を組んでいるので、ずいぶん気難しいそうに見えるのだが本人は自覚なし。しかもその上にハリセンを常備するというアブナイ趣味(?)を持ち合わせている。
 ……無論、少女はその事を知らない。
 青年が入ってきた瞬間、皆の目はドアの場所に行ったがすぐに元に戻る。しかし少女の目はいまだに青年を見つめたままだった。目をハートにして。
 皆に“私は山下君が好きです!”とアピールしているようなモンだがこのクラスの人はそんな事気に留めるはずもなく……というか日常茶飯事化していたので気が付かなかったのであろう。つまり少女が転校してくる前からそんなのは当たり前だったということだ。
 例をあげると……だ。教卓の前の列の前から3番目色素の薄い長い髪を無造作に垂らした可愛い子がいる。名前は館山沙雪。何でも山下君の幼馴染だそうで小さい頃からアタックしているらしい。次に窓際の前から2番目、長めの髪をポニーテールにしたエルフの子。ピスティアというのだがこの子は意地を張って「好き」とは言わないのだが周囲から見ればバレバレである。
 ……と、もっと沢山いるのだが此処では二人だけにしておこう。
「おー山下。大丈夫だったのか?」
「はい、ちょっと喉が腫れてるんだそうで。学校には行って良いと言われたので遅くなったんですが来ました」
「そうか、ま座れ。今から自己紹介を始めるところなんだ」



「えー、名前は守山美沙。誕生日は8月24日。 得意なことは言わなくても解るだろうが推理することだな!今まで数々の難事件を解いてきた!」
「……何を偉そうに言ってんだアホが」
 山下君が眉間に皺を寄せ吐き出すように言った。
「ふっ、凡人は天才を妬むと言うが全くもってその通りだな!はっはっはっは。 で、大切な物は自分っと。セールスポイントは天才的な頭脳と完璧な容姿と誰にでも優しい事だな! はあぁーーっはっはっはっは!!」

 バッチーーンッッッ

「あー次は僕の番なので」
 山下君が美沙君をハリセンでぶっ飛ばしながら立ち上がった。女子から黄色い悲鳴が上がる……?いやそんな柄じゃない。せいぜい女子の目つきが変わるぐらいだ。
「名前は山下尚吾。誕生日は11月13日。得意な事は料理。大切な物は……ペットの猫……。 セールスポイントはなし。ま、よろしくお願いします」
「はっ、なんて地味なヤツだ。バカだなバカ! はーっはっはっはっは!!」

 バスコンッッッッ

「山下すまんなぁ、うちのバカが」
「いえ」
「さ、次は誰だ?」
 髪をポニーテールにし耳に赤色のピアスをした女の子が立ち上がった。
 あのピアス……私と同じのだ、と少女は思った。
「フレアって言います」
「ええぇぇぇ!??! フレアってあの人と同じ名前じゃない!!!!」
 まだ暑い夏の日差しの中、クーラーをガンガンにかけた教室で少女が叫んだ。
 皆の視線が一気に少女へと向かう。少女はその事に気づき「すっ、すみませんっ」と言って顔を俯けた。もちろん真っ赤になっている。フレアは首を傾げたがすぐに続けた。

「誕生日は2月12日。得意な事は魔法……全般、最近は時間操作に凝ってます。 大切な物はま、たくさんあるんで。セールスポイント……なんだろ?なんでもいいか。 どーぞよろしく」
 フレアが席に着くと次の席の人が立ち上がって紹介をはじめた。
 しかし少女はその人の紹介よりさっきの……フレアの方が気になっていた。“フレア”、そう言われると大抵の人がある魔法使いの事を思い浮かべるんじゃないだろうか?
 今世界には魔法使いはわんさかと溢れかえっているが実力のあるものは少ない。まして有名になるほどの者はほとんどいず……しかし近年名前が出てきた魔法使いがいた。“フレア=ミルーカ=ザクス”。その身辺は謎に包まれている。年齢不詳……どころか顔も性別さえもわかっていない。
 少女は他の人の紹介そっちのけでフレアの方を見つめていた。その視線に気づいているのかいないのかフレアは机に突っ伏して寝ている。
「おーい、次転校生だからな! 皆起きてよーく聴け!」
 いつのまにか少女のところまで番が回ってきていた。
「あっはい!……っと名前はナナ=カルラって言います。誕生日は8月12日。 得意な事は料理で大切なものはペットの猫です。セールスポイント……人見知りはしないと思います。 これからよろしくお願いします!」
 少女は言い終わると席に着きため息をついた。これでイベントは終わったようなもんだ。あとは皆の紹介を聞くだけでいいのだから。



 しばらくして全員の紹介が終わった。かなり個性的な面々が揃うこのクラスだったが今少女はそんなことよりもただ一人の人物にだけ興味を示していた。
(フレア……か、何か関係あるのかな……?)
 キーンコーンカーンコーン
「よし終わり!」
 チャイムがなり授業が終わった少女は真っ先にフレアの席へと歩いていった。フレアの席には既に何人か来ており楽しそうに話していた。
「ねね!フレアさん、ちょっといい?」
 そう言って相手の返事も待たず腕を引っ張り人気のない場所へと連れ出した。
「何?」
「あ……のさ、“フレア”ってもしかしてあの“フレア”だったりする?」
「……あぁ、あの魔法使いのことかな?」
「そう!!! 何か関係あったりするの?!」
「さぁ、どうでしょう?」
 フレアは意地悪く微笑むと少女の鼻先に指を付きつけこう言った。
「人間誰だって秘め事はあるもんだ、ってね」
「〜〜〜〜〜」
「関係ないとは言わない、関係あるとも言わないけどね」
「ってことは?!」
「……っていうかね全員訊くんだよそんな風に」
「……」
「じゃ、そーゆーことで」
 そう言うとフレアはまた教室の方へ戻っていった。
 少女はフレアの背中を見ながら考えた。

 秘め事……か……、と。
なんつーか文才なくてごめんなさい。支離滅裂すぎ。ぐはっ(吐血
フレアんはキャラ微妙っすね。
ま、とりあえず山下君がモテモテってことで。(意味不明
ていうか誕生日適当ですいません。後で変わってるかも。こういうの考えるの嫌いなんだよおォォ。

2003.8.16 - 執筆 / 2003.10.19 - 加筆修正