あ、そこそこ!そこのアナタ!ちょっと来て!!
 そう、アナタ。 ね、ちょっとこっち来て!
 あのね少しだけお願いがあるんだけど……いい?
 ある6人を個人意見で分けてみて欲しいの。
 え? どういう分け方かって?
 ……それは人それぞれだけど、その6人を見たらたぶんわかるよ。
 さ、着いた 。あ、6人って言っても此処にはいないの。
 だからこの消しゴムを使って、分けてみて。
 6人の名前は――



「で? どうだったんだ?」
「ふふふ、やっぱり私の思った通り!!」
「……全く……なんでこんなのがやりたいんだよ」
「え? だって気にならない? どんな風に思われてるかーとか」
「別に私は思わないけどな」
「フレアは思わなくても思う子はいるの!!」
 ナナは声をあげた。
 その横にはフレア。 何かを読んでいるみたいだ。
「……つかさ、質問しまくったんだな……」
「うん♪ 恋愛相談から先生調査まで! でも一番すごいのはやっぱり“変人”分け!」
「あー……これか……なんだこれ、全員一致??」
「すごいでしょー。 やっぱり変人は誰から見ても変人って事だよね」
「なぁ、ナナ。 なんでこの6人の中に私の名前が入ってるんだ?」
「んーーー……なんでだろうねぇ?」
「……まぁ、いいけど。選ばれてないようだから」
「おかしいよねぇ。 フレアが選ばれないなんて」
 にこやかに首をかしげるナナ。 ……随分とR学園になじんでしまったようである。
 対するフレアもにっこりと笑った。
「ナーナーちゃーん? 何か言い残す事はー?」
 その手には鮮やかに光る炎の珠があったとか、なかったとか。



 * * *



「皆ー静まれーーーぃ!!」
 フレアが教卓のところへ立ち叫んだ。
 ……叫ばなくともフレアが声を出すとクラス中はすぐに静かになると思うのだが……。
「今日の学級会はナナがなんか言いたいことあるらしいから。 寝ないで聞けよ?」
 もう既に向こうの世界へ入りかけの者も居たが、さっと起きるか、周りの人に起こされていた。“起きてないと怖い”、皆は最近フレア恐怖症なのだ。
「んじゃ、ナナ。 後はよろしく」
「ラジャ!!」
 すたすたと自分の席から立ち、教卓へ向かうナナ。 皆は不思議そうにその様子を見守る。……一体何がはじまると言うのだろうか?
「皆聞いてね! この前取ったアンケートの結果を発表しますっ!!」

 ざわざわざわ

 アンケートって何だ?、等と言う疑問が各地で起こったが、すぐにあの事だと思い当たる。 休み時間にうろうろしていると突然ナナに連れ込まれ、聞かれた事を思い出したのだ。……あれがアンケートなんだろう、ざわめきは静まった。
「皆には色々と質問させてもらってー……ちょっと待ってね、えいしょっと」
 ナナは大きい紙を取り出し黒板にマグネットで止めようとした。
 だが小柄な体ではとてもその大きな紙を一人で貼ることが出来ない。「えいやぁ!」という掛け声で何度もやっているのだがなかなか出来ない。 見かねたフレアが魔法をかけた。

 パチン

 指を鳴らす。
 静かな教室にそれが響き渡る。
 すると大きな紙とマグネットはまるで意思を持ったかのように自分(?)で黒板に貼られた。
「フレア、ありがと〜♪」
「いえ、どういたしまして」
 と言いつつフレアは肘をついて眠りに入りかけている。……皆に注意したくせに自分では寝ようと思っているのだ。だがそれを注意できる者は誰もいない。……はずだった。
「フレアーー! お前何寝てるんだよ!起きろーー!」
 眠さをこらえていますっ!、という表情をした美沙君がフレアをボカっと叩いた。
 美沙君は周りの人たちに袋叩きにされ、寝るに寝れなかったのだ。なのでその怒りをぶつけているのだろう。
「……痛い」
「当たり前だ! 殴ったんだからな、はっはっは!! ふぎゃぁっ!!」
 叩いた後、腰に手を当てて「フフンッ」とそれを言ってのけた美沙君だったが、フレアに怯える他の生徒らによって押さえつけられてしまった。
『守山、黙ってろよ。お前知らないだろうけどマジで怖ぇんだから!』
『そうよ、みっちゃん。殺されるわよ!』
 小声で話しかけてくるも、押さえつけられた時に机の角で頭を打った美沙君は既に向こうの人になっていた。そのまま首根っこをつかまれズルズルと自分の席へ戻って(戻されて)行く。……不憫である。



「えーっと、では発表しますっ!!」
 バンッ、と机を叩きナナが言う。
「まずは“かっこいいと思う人!”。 これは一応クラスの男子全員を対象にしてみました。そして女子の皆さんにアンケートしました。上位3名の発表ですーv」
 楽しそうにナナが言うと、黒板に貼られた紙はすっと文字が変わり “かっこいい人ランキング” という文字が浮かび上がった。 ……どうやらフレアが操作しているようである。
 その紙は一番上にタイトル。その次にランキングが書いてあった。
 まだ発表されていないので名前のところにはめくるヤツが付けてあるが。
「それじゃあ、まず第3位!」
 ベリベリッ、という音を立てて紙がめくられる。
 そこに書いてある文字は――
「第3位はココロ! 何でかしんないけどあのちっこい羽っ子が3位です!」
「ナナ酷いー。 誰がちっこい羽っ子だよー!!」
 ココロが思わず非難の声をあげる。
「ココロは “かっこいい” というより “可愛い” の支持が多かったけど、時折見せる表情がいいんだとかで3位にランクインですー」
「皆ありがとーv」
「さ、次!第2位は?!……おぉっとハリセン野郎です!!」
「だーれがハリセン野郎だ」
「「「アンタや!」」」
 不満たらたらの声をあげる山下君にクラス中のツッコミがきまる。
「さてさて、次は第1位! 誰だと思う?」
 ナナが口元に手を当てて首をかしげるポーズを取る。
 皆はそれぞれに考えた。
 ……女子は既に結果を知っているので考えてはいないが。

「じゃ、発表します!――……第1位は……くーちゃんこと、刳灯です!!!」
「えぇ?! 俺?!?!」
 寝る体制に入っていた刳灯はさっと顔を上げた。
 クラス中の視線が集まりその顔は徐々に紅くなっていく。
「刳灯は “狐耳がー” とか “なんとなく” って人も多かったけど、何人かは “好きだから” とか言うのもあって。
 見事1位です! やるねぇくーちゃんv」
「すすすす好きぃ?!?! え、そんな、俺……困るよ」
「女子の皆さん聞きましたか?! くーちゃんは好きな人がいるらしいですよ!」
 小さな声で言ったにもかかわらずナナが耳ざとく聞き、手をマイクの形にして言った。
「誰?ね、誰?」
 その目は爛々と輝いている。
「う、うっさい!誰でもいいじゃんかよ!」
 明らかに照れながら、刳灯がナナを手で追いやる。
「うー、いつか絶対に聞き出してやりましょう」
 レポーターよろしくマイクにした手を口のところへやり、そう言った。



「さー、他にも「先生調査」や「可愛い子」、「頭がいい子」などいっぱいアンケートとりましたが、文字数の関係で省きます! あとでこの紙を掲示板に貼っとくんでそこで見てねー。ってことで今回の目玉! “変な人” の発表です!!」
 皆は、文字数って何の話だ?、というような顔になったが、すぐに「変な人」の結果発表に気を奪われた。自分の出した答えが合っていたかが気になったのだ。
「じゃっじゃじゃーーん!!!!この “変な人” はランキング形式じゃなくて、6人を私が予め抜粋しておきそれを皆に分けてもらいました!」
 バババン!と黒板を叩くと紙の文字が変わり6人の名前が出てきた。
 < 館山沙雪、フレア、ピスティア、守山美沙、オルド、山下尚吾 >
「「「ちょっと待て何で私(僕)の名前があるんだ(ですか)!!」」」
 フレア以外の5人がそれぞれ口にした言葉は、言い回しは違うものの言いたいことは全て同じだった。
「えー? 私なりにちゃんと考えたんだけど?」
 首を傾げる。
 その様子を見てフレアが小さく声をかける。
『そういえばお前って山下の事好きだったんじゃなかったのか?』
『フレアってばそんな大昔の事言わないでよ』
『お、大昔……』
『なんていうか目が覚めてね。何であんな事になってたのか不思議で仕方ないよ』
「ナナちゃんそれで結果は?」
 シーミナが席から声をかける。シーミナの席は結構離れているのだが、よく通る綺麗な声をしているので少しざわついたこの教室の中でもちゃんと聴こえた。
「うん、今からするね!!」
 ガッツポーズを取ったナナに、不満の声をかけた5人は自分の席に追いやられた。
「えーっとですね。皆にはこの6人の間に境界線を引いてもらったよね。 そしたらすごいんだよ!全員の意見が一致したの!……皆もうわかったよね?」
 コクコク、と6人以外の生徒が頷く。
 フレアも結果を知っているのだが、この6人の中に入れられた事をまだ不満に思っているらしく眉間に皺を寄せ腕を組み、黒板を睨んでいる。
「ささ、では結果発表と行きましょうか!皆はもう結果を知ってるワケだけどこの不幸な方々は知らないのです!! あたっ……ってみっちゃん何すんのよ」
「ふっ、不幸な方々だと? 笑わせてくれるわ!どうせ変な人はハリセン野郎と魔法バカなんだろう?!結果なんてミエミエじゃないか!」
 悪役のごとき背後に変な炎を携えた美沙君がナナを叩いた。
 今にもまぶたはくっつきそうだがなんとか理性で制御しているようだ。
「まぁまぁ、見ればわかるって」
 背後から魔法バカ……もといフレアが肩を掴み制した。というより脅しだった。
 もう片方の手には何やら得たいの知れないものが浮かんでいたからだ。

「では運命の境界を引きますよ!!」
 ナナがやたらでっかい油性ペンを持って言った。
 皆は神妙に頷いた。

 ギギ ギギギィ

 特有のあのイヤな音を立てて線が引かれていく。
 ちなみに線はそれぞれの名前を書いた6つの○の間を引いていっている。
 今沙雪さんとフレアの間に線が入った。
 そしてその線はピスティアと美沙君の横を通り過ぎ、オルドと山下君の間を経て、またフレアと沙雪さんの間に入った線へ戻ってきた。
 ――……つまり沙雪さん、ピスティア、オルドとフレア、美沙君、山下君に分けられたのだ。

「……ナナ、お前図ったな?」
「え? 何のこと?」
 ナナはもうR学園に完全に染まり、変な人たちをあしらう術(!)を身に着けたようである。
 そして自らが “変” になって行きつつある……。
「もちろん、みっちゃん達が変な人ー。 さゆちゃん達はまぁ普通の人っ!」
 にこやかに結果を発表する。
 山下君は眉間の皺が濃くなり美沙君は腕を組み黙ってしまった。
 フレアは……突き刺すような目つきで皆を見ている。
「さっきも言ったけど全員意見が一致なんだよー。すごいよねぇ。 しかも大半の人たちが10秒しないうちにわけたの!これは本当にすごいっ!!」
「…………………………………………………… へぇ」
 フレアが呟く。
 一気に教室の温度が下がった。
「あれ? フレア怒ってる?」
「怒るも何も、あのノートには書いてなかったハズだが?」
「やだなぁ、フレアってば。 私は自分から死にに行くような事しないよー」
「……確信犯か」
「ま、そゆことv」
 ナナがにこやかに答える。
「……になる者よ……ざ……の……」
 途端フレアが下を向いて何やらブツブツ唱え始めた。
 近くにいた者は一瞬のうちに青ざめ助けてくれと合図を出す。
 それを見たのかナナがすかさず口を開く。
「でもね!すごいんだよ!!フレアは “まともな人” ランキングでは1位なの!!」
「え?」
 フレアは何かを唱えるのをやめ、さっと顔をあげた。
「へへ、知らなかったでしょー。手の内はそう見せるもんじゃないのだ!」
 勝ち誇ったようにナナが言う。
「そっか。 ってことはもちろん “変” じゃねぇな?」
「うん!!」
 その時ナナの頬を汗が滑り落ちたのをフレアは知らない。
 実は “まともな人” ランキングなんてやっていないのだ。もしもの時のために考えていた言い逃れの術である。……てかそうじゃないと矛盾し過ぎている。
「ふふふ、はっはっはっは!!それじゃぁ私も何か別ので1位に?!」
 美沙君が後ろから声をかける。
「いや、みっちゃんは何もなし。 あ、美人さんのとこでは2位だったけど」
「美人ね……それならいいだろう。 その1位は誰だ?」
「1位?あぁ、シーミナだよ。 ちなみに3位はさゆちゃん」
「あら、私?嬉しいわ」
 その会話が聴こえたようで、シーミナはポッと顔を赤らめて言った。



 * * *



「ってことでとりあえず発表を終わります!! またやるかもしんないからその時はよろしくねーv ではっ」
 ペコっとおじぎをしたナナは自分の席に戻っていく。
 と、その時色んな人に訊かれた事があった。
『ねね、本当に “まともな人” ランキングなんてやったの?』
 ナナは「やったよー」と答えた。
 にっこり微笑んで言うので訊いた人達は「あぁ、俺(私)に訊かなかっただけなんだな」と思った。

 ナナは思った。
 (……私に訊いたらそうなったんだよなー。 だってこの学園変だし)





そんな少女は自分が既に『変』の境界線を越えている事を知らない。
めっちゃ面白くねぇ。なんだコレは。
ちなみに『かっこいい』ランキングはれんたの好きなキャラです。
最近はくーちゃん贔屓で。ホントはココロを2位にしようかと思ったんだけどね。

やっとこさナナが主役っぽいです。つか最初の方とキャラ変わりすぎです。
染まりすぎです、アンタ。

……染めたのは私ですかね?(うん

2003.8.29 - 執筆 / 2004.6.9 - 加筆修正