「呼ばれてっ!」
「呼んでねぇ」
「飛び出てっ!」
「飛び出る前に飛んでけ」
「ジャジャジャジャ――ンッッ!!」
「……しょっぱなから著作権侵害ってどうなんですかい」
「てか何よ、ビスター? さっきから俺様の言うことに全部ツッコんでくれちゃって」
 不機嫌そうな面でまたまた不機嫌そうな声を出したのは、外見だけ見るとそれなりに良い……つーか、作者のせいで余りわからないが、“めちゃめちゃ”良い通称変態ゾンビのファルちゃんだ。
「いや、突っ込むってか口が勝手に」
 はたはたと手を振ってそれに答えるのはそのファルちゃんの飼い主もとい召喚主のビスターだ。結構イイとこのぼっちゃんの筈なのに、最近言葉遣いが悪くなってきたようだ。その理由は……わかるような気がするが。
「口が勝手に……ねぇ。ふむ、それじゃそれは俺様とコンビを組みたいって事で……やっだぁビスター。ワタシタチモウコンビデショー?」
 どがっ
「やめんか変態」
 あからさまに変な外国訛りを使われたのが大層不満だったらしい、ファルの頭にはビスターのキックが炸裂した。
「ね、ねばぁーぎぶあっぷ……!」
 それでも尚ねばねば、と納豆のように起き上がるファル。ビスターはふぅ、とため息をつくと何とも同情の篭った視線を送りながら部屋の中のソファー(ちなみに今居る場所とは結構離れている)へと向かった。
「な、な、何だよその哀れみ篭りまくった視線は!ぐぬぬっ、いつの間にか形勢逆転してるよーで許せん!」
 ファルは背後に炎を背負いながら、近くの椅子に座り込んだ。

「ったく、お前らもなかなか飽きないんだな」
 グビッとウーロン茶?……ん、それにしてはやけに泡が――いや何も言うまい!兎に角、彼女……フレアはコップを傾けながら笑った。
「……飽きる飽きないの問題じゃないですけどね」
「確かにそれは言えてるな! まぁ、せいぜい頑張ってくれたまえ!」
 ぼやいたビスターの背をバンバンと叩きながら言ったのは美沙君。毎度の如く「あらやだ、奥さんお葬式?」なんて言われちゃうよーな真っ黒の服だ。
 ちなみにその手にはやたら汗をかいたコップ。中身は……げほげほっ。
「うん、でもビスターなら大丈夫だろ。私が保証するよ」
 呆れたような笑みを張り付かせながらフレアは無責任に言い放つ。ビスターは「そうですかね……」とまたぼやいた。

 キィ……
「お菓子、焼けましたよ」
 扉を開けて、深紅の髪の男性が入ってきた。彼の名前はグリッセル、色々ワケ有りでフレアと同居しているのだ。今回は特別に出してやることにした。
「へー、すっげ美味そうじゃん♪ グリスは相変わらず料理上手いな〜」
 ファルがひょい、と椅子から立ち上がって覗き込む。お盆の上にはクッキーやらマドレーヌやら……所謂“定番”なお菓子がのっていた。でも定番を侮ってはいけない、上手い人が作ればそれはもう……!!!
 ――っと、少し話がずれてしまったが。
 兎に角お盆にはお菓子の皿がのっていた。
「あ、まだ食べちゃダメですよ。貴方はすぐにそうやってつまみ食いしようとするんですから」
 手を伸ばしてきたファルを咎めながら、グリッセルはその手が届かない位置までお盆を上げた。
「ちえっ、いいじゃんかよー。 減るもんじゃねーんだし」
「「いや、減るしっ」」
 行儀悪く悪態をつきながら言った言葉にすかさず皆が突っ込む。確かに今日(こんにち)のセクハラ親父が新人OLのケツを撫でるときに言う台詞とは少し勝手が違った。
 お菓子は食べたら減る。 当然の事なのだ。
 カタン
「グリスさん、お茶何処に置けばいいですか?」
 お菓子皿を持ったグリッセルに続いて入ってきたのは、美沙君の天敵、ハリセン馬鹿こと山下君だった。どうやら山下君、お菓子作りを手伝っていたらしい。まぁ、彼の腕はかなりのものらしいから安心だろう。
 だが、一人だけは眉間に皺を寄せまくって叫んだ。
「なな、何で山下が神聖なキッチンから出てくるんだ!……はっ、さてはここで大量殺人事件を起こすつもりだな!な、なんてヤツだ!刑事の風上にもおけん!」
 いや、ホントに殺人犯すよーなヤツは風下にもおけんですよ。皆は心の中でそう思う。
「はっ、人間の風下におけん貴様に言われたくないね!――っと、君には特別にお菓子を作ってあげたんだった」
 至極嬉しそうに一緒に運んできた皿を差し出す。そしてにっこりと爆弾を落とした。
「美沙君特製のカリフワラークッキーだよ♪」
 “♪”マークなんて付けちゃった山下君。側から見れば周りに花とか浮いてそうな雰囲気だ。……いや、実際に浮いてたかもしれない。それほど、楽しんでいたという事だ。
 さて、美沙君はと言うと。

「逃げるなって、お前」

 逃げ出していた。



「あー……逃げちゃいましたよ。どうなさるんですか?」
 全然困ってない風にグリッセルが訊いた。
「そりゃ、尚ちゃんが呼びに行くに決まってるだろ?やーやー、山下さん。わざわざ二人きりになりたかったのですね、このプレイボーイめっ☆」
 レポーターよろしく手をマイク代わりにファルが言う。心底、楽しんでいる。山下君は一瞬顔を赤くしたが、すぐにいつもの無愛想な顔に戻って部屋を出て行った。
 それを見送りながら、未だレポーターに扮している(?)ファルが首を傾げる。
「――なぁ、フレア。さっきあんな事言った俺様が言うのも何だけどな? 実際のトコ、あいつらどーなんだ?」
「……さぁ、どうなんだろうな。R学園や番外編を見る限りじゃ二人とも「喧嘩するほど仲が良い」な感じだが、本編を見るとどっちも人間やめてるしな」
 なかなか悩みどころだな、と考え込む。
「確かに、僕等はまだ日が浅いけど、何となくそんな感じしますよね」
 ほら、こんな感じ、と、手でハートの形を作りながらビスターが言った。
「でも向こうで話している時は全然そういう気配はしませんでしたよ」
 グリッセルも加わる。四人は再び首を傾げた。
 と、その時。
「別にいいけどさ、お前等その話、二人に聞かれてもいーのか?」
 扉が開いて、やっと刳灯がやって来た。そしてその後ろには真っ赤な顔をしたトマトさん……もとい、美沙君と山下君が。ちなみに「いやん、そんな図星っ///」とかそういう赤さではなく、「て、てめぇらあぁ!」という“怒り”の赤さだ。
 当然、四人は固まる。

 …………。

「か、かかか、かかかかかか」
「……かつお?」
「違う! 勘違いだ!勘違いだぞ、二人とも!!」
 最初に口を開いたのはフレアだった。と言っても、最初は“か”しか言えていないのだが。
 両手を前に出して精一杯誤解を解こうとする。だが、誤解を解くと言っても話していたことは取り消せない。そこでフレアはほんの少しだけ良心が痛んだりもしたが、長年の友を差し出すことにした。
「こっ、これはファルが言い出したんだ! そうだな、ファル!」
「あ、あぁ。そうだけど……って罠かい!!!」
 適当に相槌を打ったのが悪かったのだろう、美沙君と山下君の標的はただ一人、ファルだけに絞られた。

 どがっ
 
      ばきっ

   ぼきっ

「あうっ」

       べきっ

「ひ、ひろい(酷いと言いたいらしい)よーっっ!! がふっ」
 余りお見せ出来るシーンではないので、音声のみでお送りしました。

「……ったく、変な事考えるんじゃないぞお前等!」
 まだ顔を赤くさせている美沙君が吼える。皆は操り人形のようにカクカクと首を振った。



 さて、話を戻すとしよう。

「あ、グリスどうする?私達は今から強制的に昔話に華を咲かせなきゃならんのだが」
 フレアが自分の横に立っていた同居人に訊く。するとグリッセルはにっこりと笑った。
「私は下がらせて頂きますよ。まだレイサー達にお菓子を持っていっていませんしね」
 そう言ってその場に居た人達に軽く頭を下げて部屋を出て行った。
 美沙君は扉がしまったのを確認してから、フレアの横に腰掛けた。
「昔話、って例のアレか?」
 こくん
 頷きで返す。そして机の上の封筒から紙を取り出した。
「えーっと――“お前等に集まってもらったのは、ちょいとした昔話をして貰いたいからだ。いやー、アンケートで思わぬことに上位になってな、それで何かしゃべらせるって事になったんだよ。 だからさ、このサイトの歴史とか話してくんないかな?” ……だとさ」
 はあぁぁ……
 一同、一緒にため息。
 そんな中、ファルがケタケタと笑った。
「クソめんどくせーって感じ?」

 グワアアアァァァンンッ

「――☆@△#っっ?!?!?!」
 何もなかった筈の頭上から突如金ダライが落ちてきた。ファルは言葉になりきらない声を出して頭を抱えた。
「……なるほど、こうなるのか」
「あ、あぁ。ファルには悪いが敵がわかっただけマシかもしれんな」
 転げまわるその様を見ながら呟く。その表情はかなり硬く、頬を一筋の汗が伝っていた。
「よ、よし! それじゃ殺されないうちに始めよう!」
 天下無敵のフレアさんでも作者には適わない。らしくないどもりをしながら、皆に切り出した。コクコクと無言のままに皆は首を振った。



 * * *



「それじゃまず――このサイトが出来た辺りから始めるか」
 テーブルの周りに配置されたソファにそれぞれ腰掛け、やけに神妙な話し合い(?)が始まった。どうやら司会はフレアがやるらしい。確かにこのメンバーの中で一番マシなのは彼女かもしれない。
「……と言ってもな、実はサイト開設時はまだ私居ないんだよ」
 いや、居ることはいるんだけど……とフレアは口を濁す。
「そういえば僕等も居ませんね」
「言っとくけど、俺も居なかったから」
 ビスターと刳灯も言った。そして黒い馬鹿こと美沙君も口を開く。
「私は一応出ていたが、あんまりわからないぞ。なんせ主役じゃないしな」
 ちょっとやさぐれ風に言い放つ。
 必然的に、五人の視線は“居た”山下君へと向けられる。
 思いっきりサボるつもりだったらしい、あくびをしようと口元に手をやった状態で固まっていた。
「へ? あ? えぇっ、僕が言わなきゃいけないのかい?!」
「それしかないだろうが。 ま、主役さん頑張れよ♪」
 美沙君が満面の笑みでぽんっ、と肩を叩く。どうやらさっきのカリフラワー云々の仕返しらしい。
「悪いな山下。私もキャラ紹介とかはあったんだが、小説はまだ出来てなくてなー」
「フレアはまだ良い方だっての。俺等なんか影も形もなかったんだぜ?」
 そして山下君を除く五人は、同時に口を開けた。
『って事で、よろしくv』
 押し付けられた山下君は、見えない作者を恨みながら渋々と了解した。


 と言っても、僕もあんまり知らないぞ?あ、その前に読んでいない方も居るだろうから、ざっと僕が主役の小説を紹介しておくとするか。
 一応、推理モノらしいんだけど……何ていうか、こう、変っていうか。作者の稚拙な文章力のせいで推理なんてそっちのけな感じかな。というか、更新止まってるんだよな。あと、この横の黒い馬鹿も一緒に出てて。
「馬鹿は余計だ!むしろ天才とつけたまえ!」
 ――あー、馬鹿は無視してっと、小説じゃなくてサイトの話か。
 そうだな、何か「勢いだけで作りました」的な感じはあったかな。今よりもシンプルで、小説やイラストの量もかなり少なかった。でも前サイトからのお客さんが結構来てくれてて、これを読んでる人の中には作者が「R.R.R.」というサイトを作っていた頃から知っているかもしれないぞ。
 サイトデザインとかも何も考えずに作っていたようだし、あー掲示板が確か「2apes」という所のだったかな。スキン作りというのにハマっていたらしい。
 ……ま、とりあえず総合的に見て、開設当初はまだまだへろっちいサイトだったってことさ。


「なるほど、私はあんまり覚えていないが確かに今よりもシンプルだったかもな」
 フレアが深く頷いた。
「じゃ、山下は一応ここまでにして……もう少ししたら他のも出てくるからな」
 そう言って美沙君の方を向いた。
「な、何だ?」
「次はお前か私かになるんだけど……どうする?」
 美沙君は少し考えた後「それじゃ私がやろう」と言った。


 んー、まだ開設から少し経っても小説はほとんど進んでいなかったんだ。だから当然私の出番も少ない、けどな驚くべき事にそんな私を描いてくれとリクエストされた事があったんだ。
「あぁ、あれか」
 うん、あの例の白いの……だ。サイトの事とは関係ないんだが、他に話すことあんまないからそれにするぞ。
 あのリクエストをしてくれたのは津月さんと言う方だそうだ。今作者のサイトには番外編やら結構あるけど、そういうのを考えていない頃にあれを頼まれてなー。聞いた話だとかなり楽しく描いてたらしい。全く、私が黒しか着ない信念を持っているというのに作者の権限で簡単にねじ伏せるんだから、独裁政治だぞ!
「……いや、違うだろ」
 う……コホン。まぁ、そんな感じだ!ちなみにこの頃は小説よりイラストの方が多かったみたいだな。あー、それとかなりすごい早さで改装を繰り返していたぞ。


「飽きっぽい所は今も変わらず残ってるって事ですね」
 ビスターが納得顔で頷く。
「あぁ。 でもその頃と比べると今は随分落ち着いてると思うぞ?」
「……確かに」
 山下君は顎に手を当ててその頃の事を思い出しているようだ。ん、何だか眉間に皺が寄ってきているぞ?
「じゃ、次は私の番かな。お前等はまだ影も形もなかった筈だもんな」
 ぽんっ、と膝を叩く。“お前等”な三人はその言い方に少し(悪い)反応しながら、フレアの話を待った。


 美沙が話したのはたぶんデザインが「空」の時辺りだと思うから、その続きから話すかな。
 あの頃は今と比べると小説がかなり疎かにされててさ、更新もすごい少なかったし。何よりページのレイアウトが投げやりだった!
「うんうん、今考えると殴りたくなるな」
 だろ?だから今は「創作小説・イラストサイト」なぁんて書いてるけど、あの時は絶対に「創作イラスト・小説サイト」だったな。ま、その代わりイラストは結構更新していたみたいだけど。ま、当然っちゃー当然だな。
 あと、その頃からちゃんとサイトデザインの事――というか、如何に“自分が使いやすいサイト”にするか、ってのを考え始めたらしい。……にしてはヘボいのばっかだったんだけどなー。
「!!! フ、フレア!それ不味くないっすか!?」
 へ? あ、あぁ……大丈夫だって。自覚してるヤツは何にもしてこない筈だから――ほら、大丈夫だろ?


「サイトデザイン……か。また何か考えてるらしいけど、どうなるんだろうな」
 お菓子の皿からクッキーを摘みつつ、刳灯が言う。
「んー、今作成中のに飽きなきゃ改装するだろうけど……どうだろうなぁ?」
「ホント飽きっぽいもんな、作者。一体何個没になったことやら」
 同じくお菓子皿からクッキーを摘んでいたフレアとファルが同時に首を傾げた。すると山下君が思い出したように手をぽん、と打った。
「あぁ、大丈夫だと思うよ。ほら、今のデザイン間違ってるトコが多すぎてヤバイとか言ってたじゃないか。だからたぶんすると思う……そうだな、今月中にはするんじゃないかな」
「そっか、ま、別に私達にはあんまり関係ないことなんだけどな……っと、次は刳灯か?」
 山下君の言葉に返しながら、次に進める。うむ、ちゃんと司会の役割を果たしているようだ。
「俺?……上手く話せるかわかんないぞ?」


 俺はお前等と違って主役系じゃないからな。 知らない人も多いと思うから何に出てるか、だけは言わせて貰うかな。
 えっと……、知ってる人も居るだろうけど、このサイトが一万ヒットした時の企画で「通称“R”学園」っていうのを始めてさ。俺はその中の一生徒、主役はナナだから……そうだな、かなりオマケして準主役ってトコだな。
「でもお前その位置でもかなり上位にきたんだから良いじゃないか」
 うん、自分でも信じられないんだけどたくさんの方が票を入れてくれたらしくて……こんな所で申し訳ないけど、本当にありがとう。
 で、サイトの方だけど。8月の初めに丁度一万ヒット御礼とサイト開設3ヶ月、って事で改装したんだ。その時初めて、インデックスに直接ページを表示させる形をとったみたいで……結構驚いた人も居たらしいな。
 この時からかな、小説に力入れ始めたのは。驚くべきことに「通称“R”学園」の大半は8月にほとんど書いたんだ。1日1本が普通な時もあったりしたからな……今はその反動か亀なみになってっけど。R学園に限らず、他の小説も割りと更新してたしな、フレアのヤツも結構進んだだろ?


「進んだ……って程でもなかったけどな、でも、ま、少しは」
 ふぅ、とため息をつきながら肩を竦める。……ってあの時は結構進んだと思うんですけど。
「うっしゃあ!んじゃ次はやっと俺等の番だなっ」
「そうだな、じゃ、ファルから言えよ」
 立ち上がって叫ぶファルに投げやり状態のビスターが言う。
「う……何かビスターめっさヤル気なっすぃんぐ?いやぁねぇ、主役がそんなんだったらいけませんことよ?」
 あくまでにこやかに言い放つ。その様子を見ながら刳灯が呻く。
「――ビスターってホント大変だな」


 じゃっじゃじゃーん!やっとこさ、俺様ファルギブさんが出てくるんですよ!
 サイトの感じは丁度秋っぽい時、寝る前に突然閃いたんだってさ。んーとなぁ……確か。
『っひゃー!めっちゃイイ天気じゃん!イイ空気!うんうん、サイッコーv』
『……確かにそーだけど……えぇい、1メートル以内に近づくな、臭いっ!』
 とかそういうのが頭の中にいきなり浮かんだらしくって……ってこんなんがいきなり浮かぶ頭って最悪じゃん。ま、俺様としてはおかげで日の目を見ることが出来たんだけどさ。
「でもさファル、この台詞ってお前等の小説の冒頭とあんまし変わらないよな……」
 ん、そだけど?
「ってことは……お前、良い天気になると臭く……なる?」
 ―――――……ば、ば、バカヤッローーー!!!なるはずねぇだろっ、これはなー、イリュージョンっつーヤツで見せかけてんの!俺様の本来の姿を見れるのは世の中の魔術師くらいだ!
 ……ったくー、尚ちゃんやみっちゃんみたいに次元が違うヤツが言うのならわかるけど、くーちゃん頼むよう。
「ご、ごめん……」
 わかったならそれでよろしい!
 あ、サイトの方はさっきも言ったけど、紅葉の写真を使った秋っぽいヤツだったんだよな。フレームってのを使いまくりで、対応じゃない人には見づらいサイトだったろうなぁ。ちなみに9月くらい、目安の一つとして言うけどカウンターは1万5、6千くらいだったと思う。
 んで注目すべきは更新速度だね!くーちゃんも言ってたけど、8月・9月はすごい勢いで更新してたんだ。「0574ランキング」の紹介文にも「毎日更新続行中!」って書いてたからな。……でもそれを本当にやっていたのがすごい。
「じゃ、今はダメダメじゃないか」
 むー……ダメダメとまではいかねーけど、もうちっと頑張って欲しいよねぇ。


「もうちっとどころか、かなり頑張って欲しいけどね。僕等の小説なんて更新止まってるし……まぁ、美沙君は番外編を書いてもらってるらしいけど?」
「んっ、ま、この私が主役の話を書くのは当然だな!ふああぁっはっはっは!!」
 高笑いの直後にさっと懐に手を伸ばす山下君。……けれども盛大にため息をつくと何も出さずに手をひっこめた。ただでさえ疲れているのに、余計な力を使いたくなかったのだろう。
「よし、じゃ次はビスターだな。1年の経過もあと少しだし、ぱーっとやっちゃってくれよ」
 司会のフレア、まだ発言していなかったビスターへと振った。
「え、経過もあと少し……って事はないでしょっ!だってさっきファルが言ったのは9月〜10月でしょ?あと半年以上あるじゃないですか!」
 振られたビスターはというと、他の人は大体1ヶ月くらいだったのに、自分は長すぎる!と汗をかいていた。
「それもそうだな。うん、それじゃビスターは縮小運営してた辺りまででいいや」
「……え、えらく減りましたね。ま、その方がいいんですけど」
 小さくため息を付くと、ビスターは口を開いた。


 さっきもフレアさんが言ってましたけど、僕は縮小辺りまで話しますね。
「ビスター。あのさぁ、前から言おうと思ってたんだけど……」
 はい?
「……何で私だけフレア“さん”なんだ?」
 え、いや、だって格上の人ですし。何となく呼び捨てでは呼べない雰囲気が。
「ちょっと待てよ、ビスター!フレアが格上なんだったら、俺様だって上だろーが!なのに……ひろいっ!」
 どがっ
 ――お前はそういう事言うから格下なんだよ。黙ってろ。
「うええぇん、ビスターがいじめるよう、フレアぁ……」
「確かにお前は格下だよな。 黙ってろ」
「……ひ、ひ、ひろいわっっーー!!!!!」
 ま、変なヤツはほっておいて。
 10月に入って背景にピアノの写真を使ったデザインに変えたんで……あー、もう丁寧語は抜きにしよう。兎に角、変えたんだ。だから作者は「ピアノのヤツ」って読んでるみたい。
 この時辺りからかな、少しずつ更新速度が落ちていってさ。
 あ、さっきは言うの忘れてたけど。僕等の小説、前はメールマガジンで連載してたんだよ。でそのメルマガの発行もかなり遅くなってさ。何か精神的にも色々参ってたらしい……精神弱いからなぁ、作者。「もうこうなりゃズビッとズバッと縮小じゃぁ!」とか言い始めて、縮小運営したってワケ。
「でも、あの縮小運営はサイト改装のためもあったんだよな?」
 うんそう聞いてる。その次にする予定だったデザインは今までのと違って結構大変だったらしいから、そのくらいしないとダメだったのかもしれないしね。
 それとこの「ピアノ」の時から「0574ランキング」の小説部門に参戦してたっけ。あ、ちなみにイラスト部門の方は9月に撤退してたんだ。今はシンプル部門っていうのに出てるけどね。
 それから!この時に2万ヒット、そして初めて「オリキャラさんに50の質問」っていうのをしたんだ。その為にアンケートもとったりして。半周年の為のアンケートもこの時辺りから取ってたんだよな。


「そうそう、半周年のでは私とお前が1位ペアになったんだよな」
 うんうん、と思い出しながら美沙君が首を振った。
「あぁ、そういえばお前等服が違ってたよな。……そういや今回のイラストもそれっぽい要素を取り入れてるみたいだよな。私と美沙の服が途中で変わってるから」
 フレアはそう言うと、突然紙切れを取り出した。
 そこにはフレアと美沙君が……確かに途中で服が変わっている。
「そういやさっきからサイトのデザインとか小説の事ばっか話してるけど、イラストの事はどうするんだ?」
「……話すべき、かな?」
 その紙切れを見ながら刳灯が言った言葉に山下君が考え込む。
 ……。
「うーんでも話すっても実際に見なきゃわかんないし、作者の事だから昔の絵を晒すのは恥ずかしいだろうし何より「めんどいわー」って言うと思うぞ?」
「あ、言えてる。 すっごいめんどくさがりやだもんな、作者」
 ……。
「ま、イラストの事はまた今度ってことで」
「今度あるんかい、とかそういうツッコミはおっけぇ?」
 ファルがツッコミ許可を取ろうとすると、やけににこやかな笑顔のフレアがぴしゃりと言った。
「無理」



 * * *



「さて、と。6人だからもう一周してしまったな……」
 テーブルを囲んだソファに座っているので、すぐに全員の顔を見渡すことが出来る。なのでフレアは皆の顔を見ながらちょっと肩を竦めた。
「どうしようか?あと半年近く残ってるんだけど」
 するとファルがすちゃっ、と手を挙げた。
「ん、ファルギブ君」
「俺はもう終わっちゃっていいと思いま――げ、げほんげほんっ」
 頭上に現れた例のモノを見てしまったのだろう、ファルはそのまま咳で誤魔化した。
「……ま、終わることは不可能、と。 もう後は皆で適当に話せばいいんじゃないのか?」
「うん、俺もそう思うよ。大体この半年、ロクに更新してないんだからさ」
 紅茶のカップを傾けながら、刳灯も意見する。司会進行のフレアは皆の意見を聞いて、深く頷いた。
「それじゃ後は好き勝手話す、って事でいいか」


 好き勝手、って言ってもやっぱ大雑把には話とかないとダメだろうからな。私が代表で話すことにしよう。
 私の推測だが、たぶん今から話すデザインの時から来てくれてる人が多いんじゃないだろうか?いや、違ったら申し訳ないんだが……この時からいきなり来客数が増えたんだよ。
「そう言えばそうだったな。それまでは1日100行くか行かないか、くらいだったのに」
 そうなんだ。あれはかなりビビったって作者も漏らしてたぞ。
 でもその代わり……代わりってモンじゃないけど、更新速度は落ちっぱなし。あの改装をしてから今現在までに20本も更新してないんじゃないだろうか?イラストの方は割りと増えてたみたいだけどな。
 WEB拍手、という物を知ったのもこの辺りか。最初は流行に乗って〜とか言ってレンタルしたんだけど、すぐにスクリプトを配布してるのに気づいてCGIにしたらしい。今も付けてるけど、あれはだいぶ改造してあるな。
 改造と言えば、CGIに興味を持ち始めたのもこの辺だな。と言っても少しデザインを変えるくらいにしか触れてないようだけど……いつか自作CGIに挑戦したいとかぼやいてたぞ。
「うあ、マジでぼやく“だけ”、って感じだなー」
 ……ホントお前命知らずな性格だよな。生身の人間なら今頃死んでたぞ?
「え、あ?」
 ほら、お前の分だけ毒入ってるもんその紅茶。
「なっ、なんですとっ?!?!」
 ――と、まぁ、冗談はさて置いて。

 そのデザインも結構続いたんだけど、やっぱ根本的に飽きっぽいんだよな。
 写真素材を使う、という事に8月の改装で惚れ込んだから次のも当然写真素材!って事で色々試行錯誤して今のデザインになった、ってわけ。
 でもこのデザイン、身内にはすこぶる不評らしいな。「トップページから白ばっかでなんか寂しい」とか言われたらしくて、割と落ち込んでたぞ作者。
「まぁ、前のヤツと比べるとそう思ってしまうのも無理はないだろうね」
 でもすぐにまた変えるのも嫌だからーって今もこれなんだけど。あ、もうすぐ改装するんだっけ?


「あぁ……また写真素材に頼りっきりらしいけどな」
 もう残り少ない紅茶を一気に飲み干しながら、美沙君が答えた。
「……ま、こんなモンかな?ちなみに私の出てる「ニジノカケラ」は最近ドバッと更新したみたいだ」
「あ、読んだぜ俺!何かフレアさん、色々ヤバイんちゃいますの〜?」
 うりうりっ、とわき腹辺りを突付く。フレアはそれに動じることなく、返した。
「いや、〈私〉は別にヤバくないからな。もう少ししたら謎が明かされていくらしいが、R学園や此処に居る〈私〉っていうのはどっちかっていうと「L」寄りだからさ――あ」
 そこまで言うとフレアはまた司会者らしく、一つ提案をした。

「とりあえずサイトの事はこんくらいでいいだろ。あんまり、てか全然わからんような話しか出てこないしさ」
「え、でも他に話すことってありますか……じゃない、あるのか?」
 さっきフレアに“敬語はやめろ”と言われたビスター。無理やり直しているのが微笑ましい……かもしれない。
「大丈夫だって。あとの残りはそれぞれの小説宣伝をして貰おうと思ってさ!」
 ほら、ラカンネルを除いたら全部居るだろ?、とフレア。確かに連載・シリーズ物の登場人物はラカンネルワールドを除いたら全部居ることになる。
「なるほど!それでもってもっと読んでもらおうと言う魂胆だなっ!」
「いや、魂胆て……」
 ガッツポーズをした美沙君にすかさず突っ込む山下君。
「うん、ま、魂胆は置いといてとりあえず宣伝しとけよ。……じゃ、まず「迷探偵」の方からどーぞ」

 ---

「んー……宣伝って言っても、僕等の小説は今更新が止まってて。あ、そうだ美沙君の番外編の方の宣伝でもしておこうか。美沙君、じゃ後は任せた」
「はっはっはっは、任されよ! って事で、私が主役の番外編「願い」の宣伝をさせて貰おうか。 えーっと、何々……」
 (カンペを読む美沙君)
 
『時は平安、あるお屋敷に美沙ノ助と言うそれは大層美しい男が居りました。美沙ノ助はあろう事か全身を黒で包み、事あるごとに高笑いをあげる変な男でしたが、その容姿ゆえ女達にそれはそれは人気でした。
 そんな中、美沙ノ助は女達の小間使いをやらされている正子という女に出会います。その女は服装や髪型は地味でしたが、とても美しい娘でした。美沙ノ助は一目で正子に心を奪われてしまいます。そして正子もまた、美沙ノ助の事を想っていました――』

「ほうほう!なかなか面白そうな話じゃないか!あぁっ、美沙ノ助と正子はどうなるんだぁ!!?」

 ---

「ごめん、山下。間違ったカンペ渡したみたいだ……」
 部屋の隅で一人燃え上がる美沙君を見ながら、フレアが謝る。山下君は首を振ると疲れた声で返した。
「いや、いいんだよ。自分が出てる小説の内容も把握してないあの黒い馬鹿が悪いんだから……」
 そして懐に手を入れて例のブツを取り出すと、未だ燃え上がる美沙君の脳天に叩き落した。

 ズバシコンッッ

「んにょああぁ!!!???!」
「ったく、この大馬鹿もんが!自分の出てるヤツくらいはわかっとけ!!」
 叫び声をあげた後、ぐったりして動かなくなった美沙君の首根っこを掴んで戻ってくる。それを見てビスターは思った。「この人、僕と結構似てるかもしんない」、と。

 ---

「じゃ、次は俺様の出てる「いきなり死霊使い」ってのの宣伝させて貰うな!えーっと……大雑把に言うと、“今まで普通に暮らしてた男の子がタイトル通り、いきなり死霊使いになる”って話だ。
 その男の子ってのが俺様の雇い主のビスター!」
「雇い主じゃなくて、召喚主だろ。一応、僕が主役って事になってます。
 今は丁度旅に出てすぐに出会ったヴァルアって子の家に向かってるんだけど……そこでまた何かありそうなんだよな。ファルとヴァルアは何かこそこそやってるし、なぁファル?」
「え、あ、いやっ!別にやましい事じゃねーもん!……それにその事ならもう少ししたらわかってくるさ。タイムリミット近いもんなー」
「タイムリミット?」
「ううん、こっちの話」
「……気になるけど、ま、いっか。 で、これからの予定は――ヴァルアの家で魔女アルスラと対面、ファルの秘密を聞き出す、って感じかな。僕等もまだ詳しくは知らされてないからね」
「ま、早い話が乞うご期待!って事で〜」

 ---

「……ど、どうしたんだファル。めっちゃまともだったぞ?」
 フレアが信じられない物を見る様な目つきでファルを見た。
「む、心外だなー。俺様はいつもま・と・もv」

 ---

「向こうで何かやってる間に「通称“R”学園」の宣伝をしてしまおう。
 俺、刳灯が出てる小説でまんま学園物なんだ……けど、何かこう、変なんだよな。他の小説と違って、このサイトに出てくるオリジナルキャラクターはほぼ全員出てきてるんだ、すごいだろ?
 ちなみに俺は最初にイラストで描いて、後からR学園に追加されたってクチ。俺みたいな脇役系はほとんどそうじゃないかな。後の人たちは元々別の小説で活躍してるような人達だから。

 で、これからの予定なんだけど――この小説はお題形式で進んでるから、作者がそのお題を見てピンと来たら更新って感じかな。今は19題目の「予定外の出来事」っていうのを書いて行ってるみたいだ。俺も出てるから、更新されたらまた見てやってよ!
 あと、30個終わるまでには俺とココロのライバル対決もどうにかしたいって言ってたな。俺としては最近あの“ファルギブ”ってのもちょっと気になるんだよな。フレアとちょっと仲が良すぎると思わないか?」

 ---

「……な、くーちゃん、今何つった?!」
 最後の方は小声だったのに、地獄耳なファルちゃんには聞こえていたらしい。刳灯の胸倉を掴んでゆっさゆっさと振り回した。
「ちょ、ちょっとやめろって!!」
「いーやっ、やめないぞ!俺とフレアがいや〜んな関係だなんて言ったヤツには罰を与えるのだ!」
 心なしか涙目になりながら、刳灯を振り回すファル。その背後ではフレアが山下君から何かを借りていた。
「大体俺様はなぁ、レアっちゅー心に決めた人が居るんだよ!フレアだってジャッ――」

 ズビシッッ

「ぺぎょっ」
「……まだそれは明かしちゃダメなヤツだろ?ったく、お前は口が軽いんだから」
 ハリセンで肩を叩きながら、床に倒れたファルを蹴って隅へと追いやる。刳灯はその様子を見てとりあえずほっと息をついた。あの二人は絶対恋仲なんかにはならない、そう確信して。

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「じゃ、最後は私の出てる「ニジノカケラ」だな。
 これは“伝説”と“現代”に分かれてるタイプの小説でな。語りべが読んでいる本の内容がそのまま小説になってるというものなんだ。……つまり、小説の中で小説を読んでいるって事だ。
 今は丁度カケラ集めの合間で食事をしている所だ。けど、また変な事がたくさん起きて……“フレア”としてはかなり痛い設定になってる辺りかな。
 そしてちょっとネタバレになってしまいそうだが、次に更新予定の第11話からは語りがココロに変わる。それまでは私の一人称で話が進んでいたんだが、色々とワケありでさ。
 ま、更新を楽しみにしてやってよ」

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「……とこんなモンか。ラカンネルに関してはまだ謎が所が多いからな、伏せておくことにしよう」
 皆の宣伝が終わって、一息ついた所でフレアが言った。
「そうだな、シオってのやラクラスってのはR学園にも出てなくてあんまり知らないもんな」
 そうなのだ、ラカンネル組はR学園には出ていない……そしてその予定もない。なのでこいつ等から見たらまだまだ謎の生命体Xなのだろう。
「まぁ、僕はそれで良いよ。 あ、でも確かフレアは知ってるんだっけ?」
「あー……まぁ、な。でも私だけじゃない、ファルだって知り合いだぞ。あとナナもな」
 腕を組んで返す。ファルは突然名前を呼ばれて驚いたのか、口からクッキーがはみ出したまま、という情けない顔を晒した。
「へぇ、ナナも知り合いなんだ? そういやお嬢様だっつってたから情報網が広いのかな」
 納得顔で一人頷いているのは刳灯。確かにナナはお嬢様だが、シオとナナが知り合いなのはそれは関係ないのだ。ま、その事はまだまだ秘密だし、今ここで言う事ではないだろう。



 * * *



「まっ、こんな感じだな!言われたとおりサイトの歴史も振り返ったし、小説の宣伝もしたし……作者も言う事ないだろう」
 司会のフレアは自信満々に言い放った。
 皆のそれに頷く、そして疲れた……と思わずため息。
 そして――

「なんにせよ、こんな作者の変な思いつきに縛られたくないよな〜。あーあ、時間無駄にしちまったぜ」
「ファル、おい! ファル!!」
「え?何だよ。 だって思わねぇ?こんなサイトの歴史だっ――ってあああぁぁぁあぁ?!?!?!」


 グワアアァァァァァァアァァ――ンン


「□@×☆△*っっっ!?!?!?!」

 ズビッとズバッと金ダライ。しかも、最初に落ちてきたのより5倍はでかい。

「――こ、こういうオチか……」
 誰ともなく呟くと、一同は金ダライに下敷きにされたファルのご冥福を祈った。
 そしてそれが終わるとそのまま、部屋を出て行った。

「ちょ、ちょっと待って皆さん!俺様置いてけぼりにしないでぇーっっ!!」

 金ダライの下から、ファルは哀しく助けを求めた。





 お わ り
ここまで読んでくださってありがとうございました!
完全なギャグ話にしようと思って書き出したら、妙にテンション下がったり上がったり……で多少どころかめっさ変な部分もありますが、そこは笑って見逃してやってください。
改めて、アンケートにご協力してくださった方、本当にありがとうございました。
そして、一周年ありがとうございました!!
これからもこんな調子でギャグ万歳、適当万歳、めんどくさがり万歳、な管理人ですがどうぞよろしくお願いします!小説の宣伝はあんまり気にしないでください。なるべくホントの事書いてますけどねー。

2004年5月5日 管理人れんた