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晴矢家族について
本編で書く前のネタだったので、キャラの言動に若干の矛盾がありますが、まぁ、気にせず!
基本、那月と美波の会話です。


▼ 高野家の事情

「春菜……さん?」
「そ、春菜さん。オレの初恋の人」
 那月君は唐突にそんな事を言い始めた。
 ……いや、別に唐突では無いか――今まさに“初恋”の話をしていたのだから。
「ち、ちなみにその時おいくつで?」
「お前……なんでそういう言い方なんだよ。おいくらで、に聞こえたぞ」
「いや、それは少々耳が悪いのでは」
 なんて茶化しつつ、心の中はバクバクと焦っていた。……6割くらい。残りの4割は好奇心で埋められている。
「まぁ、いいけどよ。――小学校低学年の頃、かな。綺麗な人だった」
 その語り口にふと違和感を覚える。
「あれ、もしかしてその春菜さんって年上?」
「おう。年上も年上、母さんと同い年」
「ちょっ、熟女趣味!!!」
 ずざっと少しばかり距離をとる。
「熟女って……その時はまだギリだけど20代だっつの」
  あ、そか。低学年だったら親御さんが20代なのは十分ある。ていうかウチもそうだった。
「そんでもさー、自分が8歳?くらいでしょ。すごいよね、その年の差で恋って」
「今でもそれは思うんだけどよ、でも春菜さんはそういうの感じさせないトコがあって……」
 顔を赤らめる那月君。うわー、なんか面白い。
「お母さんと同い年って事はそっち関係の知り合いなのかな?」
「あぁ、母さんの幼馴染ってヤツ。だから小さい頃からずっと知ってて。よく遊んでくれてた」
「それがいつしか恋心に……っかー!青春だねぇ!」
 成年して酒が許される状態であれば、これを肴に一杯やりたい所だ。
「お前が親父くさいのは十分わかったけどよ……マジそれどうにかなんねぇのか」
「無理。ていうか親父くさいじゃなくて、爺くさいって方が嬉しい」
「なんでだよ」
「だって私おじいちゃんっ子だもん」
 そう、田舎のおじいちゃん・おばあちゃんと居る時間が多かった私は必然的に祖父母っ子になっていた。
 だから今でもこういう言動や趣味にその頃の癖が反映されている。
「……あ、そ」
 げんなり、と肩を落とす那月君。ちっ、失礼なヤロウめ!
「そう言ったってさぁ、言ってみれば那月君もその、春菜さん?っ子だったんじゃん。人の事言える筋合い無いと思う!」
 バンと胸を張るとウッと詰まる那月君。や、詰まるな、詰まるな、本当は筋合いあるんだからね?
 それを気づかず那月君は照れながら言う。
「……仕方ないだろ、あの頃は春菜さんが本当に綺麗に見えたんだ」
「うおー、ノロケっぽくていいなぁ。でもさ、そーいうのってなかなか恋に発展するの難しいじゃん?きっかけとかあったの?」
 不思議に思って訊くと、深く頷く那月君。
「あぁ、あった。――誠二が……春菜さんを泣かしてるのを見て、その時に、好きになった」
「……は?」
「あ、誠二っつーのは、将来的に春菜さんの旦那になるヤツで。そん時は結婚してなかったんだよ。誠二は昔――それこそ中学くらいの時からずっと好意を寄せてたんだけど、春菜さんは全然気づいてなくて。でもその頃やっと意識し始めたらしくてさ……それで、誠二と色々あって、泣いちゃって」
「で、その泣き顔を見た那月君は幼心に興奮してしまったワケか。Sか、泣き顔見て興奮とか」
「お前……誰が興奮っつったよ」
 再びげんなり那月君。
「だってその言い方じゃあそう思うじゃん。違うの?」
「ちげぇよ!母さんトコに泣きつきに来た春菜さんが、悲しいのに気丈に振舞ってるのを見て、オレが守ってやらねぇと――ってそう思ったんだよ。
 それがきっかけだ」
 初恋の事を話し始めた時は顔を赤くしていた那月君は、今は平静を保った表情で、どこか遠い目をしていた。
「そっか……それは確かにそう思ったりするかもしれないね……」
 私が仮に男でそういうシチュエーションがあったら絶対そう思うもん。か弱きモノを守り隊!精神である。
「あ、じゃあさ、その誠二さんとやらとくっついた時は泣いた?」
「……な、泣きはしねぇよ……ただ、すげー寂しかったけど」
 そう言って小さく笑う。
「でもオレ、誠二の事も応援してたから、……だから」
 その笑い顔が引っ込んで、眉が下がる。
 表情の変化がやけにはっきり見えて私は不安になった。
「だから……いいんだ、って?」
 失恋したのがそこまで痛手だったんだろうか。
 応援していたのなら、ハナから諦めていた部分もあったに違いないのに。
「いや、うん、いいんだ。それは確かだ。オレは春菜さんも誠二も好きだったから。
 だから――もう二人が居ないのが辛い」
 ……。
「……な、何で?」
 何故居ないという事になるのだろう。不安は別の方向へと加速する。
「二人とも、オレが10歳ン時に死んだんだ。晴矢を残して」
「えっ?!」
 死、って……いや、それよりも!
「晴矢君?!」
「そ、晴矢は二人の忘れ形見。結婚して、晴矢が生まれてすぐに交通事故で二人は死んだ。
 ついでに言うと春菜の両親も一緒に。誠二には身内が既に居なかったから、晴矢はそれで一気に天涯孤独になった」
「あ……それで、城崎家に……」
 晴矢君が養子だという事はそれとなくわかっていた。だって、色々と違う所があったから。
「そう。母さんがどうしてもって言って引き取ったんだ。家族ぐるみの付き合いがあったし、何より晴矢を施設になんて送りたくなかった」
 ……そうだったのか……。
「丁度小夏が生まれた頃だったから、また双子みたいねって皆喜んでたよ。
 オレ達も妹も弟も出来てすげー嬉しかった」
 にへ、と笑う那月君。
「そっかぁ……」
「晴矢はさ、誠二に似てすげー頭いいんだ。だからあの年齢なのに自分が養子だって事わかっちまった。
 問い詰められたから話したけど……幼稚園児ってあんなんだっけか、って思ったモンだぜ」
 晴矢君……。
「でも、さ、自分の家族が本当は血が繋がってない、とかあの年齢で耐えれるものなのかな?やっぱり傷ついたんじゃ……」
「やー、それがさ……」
 那月君は苦笑した。
「そういうのはまるっきり気にしてねぇみたい。それよりも……いや、これお前に話したりするモンかわかんねーんだけど」
「えっ、なになに!?」
 教えてもらえるモンならなんだってドンと来いだぜ!
 と胸の前で両手を握り締める。野次馬根性丸出しである。
「……おばちゃんかお前は」
「ん、だからそこはおばあちゃんか、とで頼む」
「わけわからん」
 はぁ、とため息をつかれてしまった。だって、この辺はおばあちゃんから受け継がれてんだもん仕方ないじゃん!
「で、何なの?」
「あ、あぁ……晴矢な、もしかして血が繋がっていないのか?って訊いてきて、それを肯定したら嬉しそうに笑ったんだ」
「……え?」
 も、もしかして家族じゃなくて良かったと、そう思ったんだろうか。
 それってなんか悲しくない?
「あー、違う違う。そういうんじゃなくて……あー、うー。なんか身内のアレコレ晒すのもハズいんだけどさ……。
 晴矢……小夏の事、好き、みてぇなんだ」
「うはっ、なにそれマジワクテカ!」
 途端ドン引きされた。
「あ、ごめんすみません。先を続けてください」
「……お、おぅ……。
 で、小夏の事が好きだから、血が繋がってなくて良かった、ってそりゃあもう嬉しそうに」
「まぁ、繋がってたら絶対にヤバイもんね。近親相姦、しかも双子って話になるし」
「そーそー、そうなるからさぁ。って、5歳児がンな事気にすんな!って感じもすんだけど」
 また遠い目をして、那月君。
「でも、ま、どっかの誰かに取られるより晴矢とくっついてくれた方が兄ちゃんとしても嬉しいんだけどさぁ」
「……それ、ってまだ早すぎない?だって幼稚園だよ?」
 それにはチッチッチと指を振って返される。
「美波は知らねぇだろうけど、誠二マジすごかったんだぜ?あの執着っぷり。だからその血を受け継いでる晴矢は確実に小夏を落とすハズだ!まぁ、オレとしては春菜さんみたく鈍感で可愛いヤツになって欲しかったけどさ」
 だって。……誠二さんってどんな人だったんだ。
「中学で一目惚れ、だろ?それから陰ながらアタックを続けて、高校・大学も同じトコに進む。んでもって更には会社までも一緒!そこまで来ると一種のストーカーみたいじゃん。ま、でも誠二は見た目良くて人当たりも良くて頭も良かったからさ……そういう常軌を逸した部分は他には悟らせてなかったっけ。
 母さんにはバレてたから、オレ達もそうだって知ってたんだけど。
 春菜さん素敵な人だったから惹かれるヤツも多かったんだけど、片っ端から誠二が蹴散らしてたらしい……。
 で、会社入って数年経った頃に業を煮やした誠二があからさまに態度に出すようになって」
「どんなガキだ、それは」
「あぁ、それはオレも思う」
 うむうむと深く頷く姿に至極同意せねばなるまい。
「どんだけ独占欲強いねん、って言うね」
「なんでいきなり関西弁なんだよ」
「ま、それはさておき」

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何がさておき、なのか!ここで切れてました。
タイトルの「高野」は晴矢の元々の苗字でした。高野誠二と高野春菜の息子、高野晴矢って感じで。
ちなみに高野夫婦&城崎母の若い頃のはこんな感じでした。 ≫ [ 096 ] 自分の心を知るなど不快なだけ。
スピンオフってよりかは、先に若い時のを創作ネタで書いてたので、こっちに出張みたいな感じ。
ビジュアルちゃんと決めてなかった頃だから、ちょっと矛盾はしてるかな。