変な声に導かれてついた先で、俺は思わず声をあげる。
「……マジ、ですか」
「――ま、マジ……です。あああああ、すみませんん!!!!」
それに答えるのは心底参ったような声。ちなみに女性。外見はなかなかに可愛らしく制服姿もたまんねーぜ。……って、そうじゃねぇだろ俺!!
「じゃ、じゃぁ、このスペシャルビッグサンダーパフェりん☆、っていうのを……」
「もっ、申し訳ございません!! そちらの商品にも白玉を使っていまして……」
またもや頭を下げてそう言われた。
理不尽だ。
一番食べたかったのは白玉あんみつだ。何でか知らないけど、むしょーに白玉が食いたかったんだ。
だから頼んだ。
そしたらなんて返ってきたと思う?
『申し訳ありません、お客様。当店では白玉は一日30個限定となっておりまして……』
まぁ、待てよ。
一日30食限定だったらわかる。人気店やら老舗店なんかではよくあることだもんな。
でも30個て。
一体なんだってそんな少数生産?!
俺の頼もうとした白玉あんみつには10個くれー入ってんだぞ……って事は単純計算一日3食。
すっくねぇよ!!
とても腑に落ちないがとりあえず納得させた俺は仕方なくスペシャルビッグサンダーパフェりん☆というこの店の目玉商品(らしい)を頼んだのだが……これまた、ダメ。
よくよく思い出せば店の前に並んでいるサンプルに白玉が乗ってたような、乗ってなかったような。
とにかくダメだって言われて俺は悩みに悩み――
「じゃあ、サルシッチャください」
なんでか知らないがソーセージを頼んでいた。しかも単品お持ち帰りで。
程なくしてサルシッチャが出てきて、俺は店員さんの申し訳なさそうなおじぎに見送られて店を後にした。
道行く人は皆忙しそうにせかせかと歩いている。
俺はテイクアウトしたサルシッチャをむさぼりながら道を進んでいた。
季節は冬。雪でも降ってきそうな曇天の下、俺は汗をぬぐった。
……。
……て、ちょっと待たんかい。
雪でも降りそうなってモノローグ入れたばっかじゃん!!汗かかないでしょ、ふつー。
――つーか、俺よく見てみりゃなんちゅーカッコしてんだ?!
上は青色のアロハシャツ。下は迷彩柄のカジュアルパンツ、ちなみに半パン。ついでに言うと足はサンダルだ。
周りを見ると皆さんそれはもう防寒はバッチリ。
コートは当然、マフラー・手袋・耳当て・帽子、服の下にはホッカイロもしてそうだ。
俺は思わず首をひねる。
だって全然寒くないのだ。……否、暑い。汗だってダラダラだ。
そしてもひとつ首をひねる。
皆さん、あまりに俺を無視しすぎやしねーか……?
そりゃぁ、確かにこの寒空の下アロハシャツの男がいたりなんかしたら危なすぎて誰も話しかけてはこねーだろうが、チラッと見てクスクス笑ったりくらいはあるんじゃないのか?!……いや、決して好んでされたいわけではないが。
首をひねるも道のど真ん中。
流石に道行く皆様の邪魔になるだろう、と脇にそれようとして人とぶつかってしまった。
「あっ、すみませ――」
慌てて謝ろうとぶつかった相手を見上げて、俺は声を失った。
こ、こいつぁ……どこからどーみたって、360度Mr.ヤじゃねーか……。
ちなみにMr.ヤっつーのは、所謂最初がヤで次がクで最後がザの人だ。頼む、続けて言うのは勘弁な。
そのMr.ヤは俺をすんごい目でニラんできて、腕をスッと動かした。
殴られる!!!
そう思って、つい身構えた……が、衝撃は来ない。
それどころか目をうっすらと開けて見てみると、ヤロウの腕はこぶしをきゅっと握った状態で胸の前辺りに配置されている。
ファイティングポーズじゃない。断じて、ない!
だって足は内股になってるし、鋭い目つきだったはずの瞳は潤んでいる。
そして。
「ンッ、やっだもう〜!タツりんびっくりしちゃったんだから!ちゃんと前見て歩きなさいよね!
……ちっ、違うのよ!アンタの事心配して言ってるんじゃないんだからね!あたしのためなんだからね……!」
タッタッタッタッタ……
……なンすか、コレ。
頭が理解を拒否してるのがよくわかる。しかし、衝撃的な映像は眼球に焼きついてしまった。
ヤロー――いや、彼女?……が何やらよくわからん台詞を吐いて去っていったというのにショートした頭がその映像を何度も繰り返しやがる。
190はあるだろう大男がぶりっ子のように体をくねらせて、その上ツンデレだと……?!?!
理解不能だ。
そういやさっきから色々と意味不明な事が起きすぎてる。
白玉が一日30個限定だったり、
冬なのにアロハシャツだったり、
Mr.ヤがツンデレだったり……。
そこまで考えて俺は頭の上にポンと電球が灯るのを感じた。
あ、そうか。
「こりゃぁ、夢だ」
――正解、正解、大せーかーい!
パンポラピンピンドッチャラリン☆
盛大な音と共に周りが暗くなり、俺はステージでよくあるようなスポットライトに照らされていた。
ライトに照らされた場所は2つ。
1つは俺で、もう1つは、
「や、またお会いしましたね」
俺を変な夢へと導いた声の持ち主が、帽子を取ってゆっくりとおじぎをした。
「……マジ、ですか」
02.まるで夢の中の
「――ま、マジ……です。あああああ、すみませんん!!!!」
それに答えるのは心底参ったような声。ちなみに女性。外見はなかなかに可愛らしく制服姿もたまんねーぜ。……って、そうじゃねぇだろ俺!!
「じゃ、じゃぁ、このスペシャルビッグサンダーパフェりん☆、っていうのを……」
「もっ、申し訳ございません!! そちらの商品にも白玉を使っていまして……」
またもや頭を下げてそう言われた。
理不尽だ。
一番食べたかったのは白玉あんみつだ。何でか知らないけど、むしょーに白玉が食いたかったんだ。
だから頼んだ。
そしたらなんて返ってきたと思う?
『申し訳ありません、お客様。当店では白玉は一日30個限定となっておりまして……』
まぁ、待てよ。
一日30食限定だったらわかる。人気店やら老舗店なんかではよくあることだもんな。
でも30個て。
一体なんだってそんな少数生産?!
俺の頼もうとした白玉あんみつには10個くれー入ってんだぞ……って事は単純計算一日3食。
すっくねぇよ!!
とても腑に落ちないがとりあえず納得させた俺は仕方なくスペシャルビッグサンダーパフェりん☆というこの店の目玉商品(らしい)を頼んだのだが……これまた、ダメ。
よくよく思い出せば店の前に並んでいるサンプルに白玉が乗ってたような、乗ってなかったような。
とにかくダメだって言われて俺は悩みに悩み――
「じゃあ、サルシッチャください」
なんでか知らないがソーセージを頼んでいた。しかも単品お持ち帰りで。
程なくしてサルシッチャが出てきて、俺は店員さんの申し訳なさそうなおじぎに見送られて店を後にした。
道行く人は皆忙しそうにせかせかと歩いている。
俺はテイクアウトしたサルシッチャをむさぼりながら道を進んでいた。
季節は冬。雪でも降ってきそうな曇天の下、俺は汗をぬぐった。
……。
……て、ちょっと待たんかい。
雪でも降りそうなってモノローグ入れたばっかじゃん!!汗かかないでしょ、ふつー。
――つーか、俺よく見てみりゃなんちゅーカッコしてんだ?!
上は青色のアロハシャツ。下は迷彩柄のカジュアルパンツ、ちなみに半パン。ついでに言うと足はサンダルだ。
周りを見ると皆さんそれはもう防寒はバッチリ。
コートは当然、マフラー・手袋・耳当て・帽子、服の下にはホッカイロもしてそうだ。
俺は思わず首をひねる。
だって全然寒くないのだ。……否、暑い。汗だってダラダラだ。
そしてもひとつ首をひねる。
皆さん、あまりに俺を無視しすぎやしねーか……?
そりゃぁ、確かにこの寒空の下アロハシャツの男がいたりなんかしたら危なすぎて誰も話しかけてはこねーだろうが、チラッと見てクスクス笑ったりくらいはあるんじゃないのか?!……いや、決して好んでされたいわけではないが。
首をひねるも道のど真ん中。
流石に道行く皆様の邪魔になるだろう、と脇にそれようとして人とぶつかってしまった。
「あっ、すみませ――」
慌てて謝ろうとぶつかった相手を見上げて、俺は声を失った。
こ、こいつぁ……どこからどーみたって、360度Mr.ヤじゃねーか……。
ちなみにMr.ヤっつーのは、所謂最初がヤで次がクで最後がザの人だ。頼む、続けて言うのは勘弁な。
そのMr.ヤは俺をすんごい目でニラんできて、腕をスッと動かした。
殴られる!!!
そう思って、つい身構えた……が、衝撃は来ない。
それどころか目をうっすらと開けて見てみると、ヤロウの腕はこぶしをきゅっと握った状態で胸の前辺りに配置されている。
ファイティングポーズじゃない。断じて、ない!
だって足は内股になってるし、鋭い目つきだったはずの瞳は潤んでいる。
そして。
「ンッ、やっだもう〜!タツりんびっくりしちゃったんだから!ちゃんと前見て歩きなさいよね!
……ちっ、違うのよ!アンタの事心配して言ってるんじゃないんだからね!あたしのためなんだからね……!」
タッタッタッタッタ……
……なンすか、コレ。
頭が理解を拒否してるのがよくわかる。しかし、衝撃的な映像は眼球に焼きついてしまった。
ヤロー――いや、彼女?……が何やらよくわからん台詞を吐いて去っていったというのにショートした頭がその映像を何度も繰り返しやがる。
190はあるだろう大男がぶりっ子のように体をくねらせて、その上ツンデレだと……?!?!
理解不能だ。
そういやさっきから色々と意味不明な事が起きすぎてる。
白玉が一日30個限定だったり、
冬なのにアロハシャツだったり、
Mr.ヤがツンデレだったり……。
そこまで考えて俺は頭の上にポンと電球が灯るのを感じた。
あ、そうか。
「こりゃぁ、夢だ」
――正解、正解、大せーかーい!
パンポラピンピンドッチャラリン☆
盛大な音と共に周りが暗くなり、俺はステージでよくあるようなスポットライトに照らされていた。
ライトに照らされた場所は2つ。
1つは俺で、もう1つは、
「や、またお会いしましたね」
俺を変な夢へと導いた声の持ち主が、帽子を取ってゆっくりとおじぎをした。
title by 雰囲気的な言葉の欠片:前中後