夢前勇者アレスの独白。
2008.7.7.
台 詞 で 創 作 1 0 0 の お 題
[ 26 ] 取り戻せないぐらい奪って。
例えばの話。
俺がここで死んだら、アイツはどう思うのだろう。
仕事が省けたと喜ぶのだろうか、それとも泣いて悲しんでくれるのだろうか。
前者ならとりあえず呪ってやる。霊体になっても見える人には見えるらしいからその人に頼んで。
……まぁ、冗談だが。
後者なら素直に嬉しいかもしれない。
だって、少しは俺の事好いてくれていたって事だろう?
一番怖いのは何も思われない事だ。
ただの些細な事として処理される。これだけは勘弁ならない。
死ぬ、という一世一代の大仕事なのだ。少しくらい心を良いも悪いも揺らして貰わないと浮かばれない。
いやいや、そういう事を言いたいわけでもないんだが。
兎に角……少しはアイツにとって、何か意味のある存在になりたいんだ俺は。
出来るのならばその心、取り戻せないくらい奪って。そして俺だけで満たしたい。
他のヤツの事なんて考えないで。昔の事なんかも思い出さないで。
ナユタ。
お前が今は死神で、俺が勇者でも。
お前が昔勇者で、死神に殺されていても。
魔王にされた後、勇者に滅ぼされていたとしても。
そんなの全然関係無いんだ。
お前がそこで笑ってる。それだけでこんなに嬉しい。
だから思い出すな、頼むから。
全てを知った俺から昔の事を聞きだそうとするな。
例えばの話。
なんてのは夢物語に近い。
でも夢物語ならばせめてハッピーエンドを見せてくれ。
死なずに、ナユタをヤツ等から開放したいんだ。